これはめずらしいわなあ、と思ってニュースに見入ってしまいました。

 広島緒方監督が退場処分になった。詳しくは広島の記事を読んでいただくとして、要するにアウト、セーフの2度の判定を巡って審判に抗議した結果です。

 各原稿にもありますが、緒方監督は現役、コーチ時代を通じてこれが初めての退場だという。

 体を張ったプレーが売りだった現役時代、一瞬、カッとなる瞬間はありましたが退場処分はなかった。

 その背景には緒方監督から聞いたことがあるシンプルな考え方が影響したと思います。それは「審判が言うんだからしょうがない。アウト、セーフは」というものでした。

 この3月、大いに盛り上がったWBCの後で緒方監督とある出来事を巡って話をしました。

 米国との準決勝の3回の守備で5-4-3の併殺を決めたと思われた後、米国側の“チャレンジ”で判定が覆ったシーンです。

 二塁・菊池が送球を受け一塁へ送ったときに二塁ベースから足が離れるのが早いという抗議によってビデオ判定の結果、セーフとなったあの場面です。

 あそこの見方について緒方監督とは意見が合いました。

 要するに「野球であのぐらいのタイミングはいくらでもあるわな」ということです。

 厳密に言えば足が離れていればセーフでしょう。それでもタイミングがアウトだからアウトとなっており、それに対し、あまり抗議しないというのが少なくとも日本のプロ野球では一般的です。

 日本に限らず、大リーグでもそういう場面を見たことはいくらでもあります。二塁ベースをまたいでいるだけでは、というシーンも見た記憶があります。

 このときのリプレー判定について緒方監督はこうも言っていました。

 「高校野球でタイブレークが検討されたり、時間短縮が野球界の大きな目標になっているはずなのに、いちいち抗議、ビデオ判定と言っていれば、方向は違いますよね」

 もちろんルールにあるので実際に自軍にコトが起これば取り入れるのは当然で、今季、広島も攻撃時にアウトがセーフになった場面もありました。

 その点について緒方監督に聞いてみたいな、と思っていた直後の退場劇です。

 あの2つのプレーをニュースで見れば、だれしも「これはなあ」と思うものでしょう。それでも「これがジャッジだ」というのならそれはそうなのです。

 ああだこうだと書いていますが、要するに少なくともこれまでの緒方監督は審判の判定に本気で文句を言う人間ではなかったということです。

 その姿勢で野球人生を過ごしてきた緒方監督があそこまで怒ってしまったことについて、監督に対する罰金処分だけで終わらせていいのかな、とは思います。