思わず「諸行無常」という言葉を思い出した新年幕開けの球界です。

多くの野球ファン同様、長野久義の人的補償による巨人から広島への移籍には本当に驚かされました。そろそろ落ち着いてきた頃だと思うので、ここでも少しだけ触れておきたいと思います。よろしければお付き合いを。

個人的なことで恐縮ですが、ABCテレビ「おはようコール」という情報番組(関西地区)でスポーツ・コメンテーターをやらせていただいています。そこで以前、ネットへの書き込みを経験しました。いわゆる「この高原とかいうヤツ、許さん」的なものです。

いまや巨人のエースとなった菅野智之が日本ハムのドラフト指名を断って野球浪人をすることになった11年の頃だと記憶します。

そこで大まかに言えば「希望はあるだろうけど指名された球団に入るのが一番いいのでは。活躍すればFA権もあるのだし…」というような話をしました。

これが巨人ファンとおぼしき一部の方々には気に入らなかったようで前述のような書き込みになったのです。

微妙な話題なので批判されるのも仕方ないとして、後日、その番組でもう少し違う話もしました。それはこんな見立てでした。

「どうしても巨人がいい」と、他球団を断って巨人入団に成功した選手がみんな活躍している。セ・リーグ5球団の選手たちは何をしているのか、という私見です。

自分たちだって内心は「あそこがいい」などの希望もあっただろうけれど制度に従っていまの球団に入っている。ならばそういう選手と対戦したときに「こいつだけは打つ」「こいつにだけは打たさん」といった意地は出てこないものかという話です。

もちろん巨人を志願し、入った選手たちは実力があるからこそ成功しているわけです。そもそも巨人に入りたいというのも個人の自由といえば、そうでしょう。なので、この意見は間違いなく「感情論」だと思います。

しかし誠に申し訳ないのですが、それを自覚した上で、正直、今でもそんな意識は持っているのです。

以前からそんなことを考えていただけに、今回、巨人のFA戦略による人的補償の結果には驚いたわけです。

内海哲也、そして長野はいずれも他球団のドラフト指名を断った後で巨人に入団した選手なのはここで言うまでもありません。

それがこうしてチームを、巨人を、去っていく。将来、指導者などなんらかの形で巨人に戻る可能性があるにしても、やはり「諸行無常」という言葉を思い出さざるを得ないのです。

内海、長野に共通するのは人望があることでしょう。特に長野の評判の良さは驚くほど。私もじっくりと会話したことはありませんが、球場ですれ違えばあいさつをしてくれるし、実にいい感じの男で、まさに「スター」です。

今回、広島移籍を受け入れたこともその性格によるものでしょうし、ここは赤いユニホームでのさらなる活躍を期待したいところです。

それにしてもチームにこだわる選手の多い巨人の「悩み」と同時に、その「すごみ」のようなものを世に感じさせたのは広島の編成力ではないでしょうか。

丸佳浩だけでなく今季は新井貴浩、エルドレッドも抜けています。リーグ4連覇へ向け、薄くなった右打者をこういう形でサラリと補強してしまう。やはり、ひと味違います。

とはいえ、それも「諸行無常」。いつまでも広島が強いとは限らないし、昨季最下位の阪神が「今季もあかんで」とも言い切れないのです。

野球は、勝負事はやってみないと分からない。「広島-巨人」の開幕カードで始まるシーズンが今から楽しみです。(敬称略)