8回裏、尾仲に代わって石崎が登板する(撮影・上山淳一)
8回裏、尾仲に代わって石崎が登板する(撮影・上山淳一)

いい場面に出くわした。大物ルーキー、中日根尾昂の“1軍デビュー戦”だ。守備から出場した根尾の打席は8回に回ってきた。対する阪神の投手は石崎剛。150キロ超のストレートで追い込んで最後は132キロのスライダーで空振り三振に切った。

石崎 相手が根尾くんだとかの特別な意識はまったくありませんでした。抑えなくてはいけないところだし、対戦する打者の1人だと思って投げました。

リードした場面で登板する救援投手として石崎は当然のことを口にした。そうは言うものの、まずは根尾に「プロの洗礼」を浴びせた形だ。鳴り物入りで入ってきた新人とはいえ、高校を出たばかりの若者である。そう簡単に打たれてはこの世界の先輩として格好がつかない。まずはよくやったというところだろう。

大物ルーキーのデビュー対戦を見ることができて、阪神はオープン戦初の連勝をマーク。藤浪晋太郎の2軍落ちはあったが名古屋遠征はいい面もちょっと出た。投手コーチの福原忍も、ほんの少しだけ納得できたかもしれない。

なにしろ、何度も書くがこのナゴヤドームで2連勝するまで阪神はオープン戦の勝利がなかった。2月に沖縄で連敗。3月に入って福岡でソフトバンクに連敗。さらに本拠・甲子園に戻っても1敗1分け。こうなると少々、困ることが出てくる。

ビジターで負けると相手打線の攻撃は8回で終わる。もちろんサヨナラ負けなどは別にして。少しでも野球を知っている人ならすぐ分かる。沖縄の2試合は浦添のヤクルト戦、北谷の中日戦といずれもビジターだった。これにソフトバンク戦を合わせると阪神は9回を守る機会を4度失ったことになるのだ。

これは投手を預かる福原の立場からすればつらい。この時期の調整は、当たり前のことだが、実戦に登板して行うものだからだ。先発要員は別にして、ブルペンに入る投手にとってはイニングが減れば調整の機会がそれだけ失われてしまう。

福原 それはありますよ。基本、オープン戦で最後に投げさせる投手はシーズンで2イニングをいかせたい顔ぶれが多いですからね。

打者はともかく、ビジターで負ければ投手陣にとって実戦のチャンスが減っていく。オープン戦とはいえ勝っていかなければならない理由はここにもある。特に阪神は今年のオープン戦全17試合で実に12試合までがビジター扱いのゲーム。残り試合もしっかり得点を取って勝っていくことが投手陣の調整にもつながっていくはずだ。(敬称略)

中日に連勝しマウンドの守屋(中央右)はナインとハイタッチする(撮影・加藤哉)
中日に連勝しマウンドの守屋(中央右)はナインとハイタッチする(撮影・加藤哉)