さあ、岡田彰布と原辰徳の一騎打ち! と注目された昨年のドラフト会議。当日の朝、原から岡田のもとにメールが届いた。高松商の浅野を巡る駆け引き。岡田の監督カムバックに際し、「こういうところで争うことになるんですね」といった趣旨の中身に、岡田はあえてスルーした。
巨人はすでに浅野1位を公言。一方の阪神は明らかにしていなかった。だから「メールで、そうやな…とか返信したら、浅野の1位がバレるやんか」と無視したわけだ。ただし、会場で会った時、「すまんかったな。返信できずに」と原に謝っている。
GTの激突。最初にクジを引いた原が当てていた。岡田はどうすることもできなかった。GとTの第1ラウンドは原巨人の勝ち…と思っていたが、岡田はまったく沈んではいなかった。「予定通り。森下(中央大)を指名できたから、それでエエやん」。これは負け惜しみではなかった。
あれから1年。答え合わせをしてみると、阪神が勝った。浅野の将来性は認めるが、今シーズンに限れば森下が1軍に定着。それも3番に座り、本塁打も2ケタ。岡田が描いた通りの結果となった。
さて今年は? 2023年のドラフト会議は10月26日に開かれる。ポストシーズンのファイナルステージが終わり、日本シリーズが行われる前の一大イベント。1カ月後に迫ったことで、各球団は詰めの段階を迎え、綿密な検討が続いている。
このドラフト会議に岡田はどこまで関与するのか。まだ正式に来季続投は発表されていないが、岡田は「来年? やるよ」と2年目に向けて障害はない。ドラフトに対しても、球団は「岡田の目」「岡田の考え」を参考にすることを決めている。岡田の持つアマ球界との人脈、情報ネットワークにも期待しており、岡田の意向が大きく反映する会議になるはずだ。
「野球は守り」が基本の岡田の考え。やはり投手重視になるのだが、現状の投手陣は他球団を大きくリードしている。となれば野手に力点を置くのか。できるなら外国人選手を必要としない戦力を、ということで、将来性のある打者を上位指名する可能性は大きい。
そこで盲点になるポジションがある。それが捕手だ。現在、1、2軍に7人の捕手登録があるものの、絶対戦力は2人。坂本と梅野だが、今シーズンは苦労した。梅野が死球で長期離脱。これにより坂本に、すべての負担がかかった。坂本は見事に乗り越え、優勝に導く働きを示し、梅野不在を忘れさせたが、やはり補う準備だけは必要。改めて捕手の重要性が浮き彫りになった1年だった。
振り返れば、阪神はドラフトで捕手を上位で指名した例は少ない。坂本は2位指名で梅野は4位。歴史をたどれば、阪神が捕手を1位に指名したのは3度ある。1968年の田淵幸一(法政大)、1982年の木戸克彦(法政大)、19997年の中谷仁(智弁和歌山)で、それ以降は1位捕手がない。
岡田には強い思いがある。「阪神を強くする。それも長きにわたっての強さ。常勝チームにすること」。その礎になることを決意しての監督復帰だ。それだけに捕手の大切さを訴える。梅野、坂本の併用で乗り切ったけど、最悪、この2人が同時にケガで離脱したら…と思うとゾッとする。
果たして今回のドラフト候補に実力派捕手がいるのか。先を見越したドラフト補強になる今年の会議。阪神の捕手補強は? これも10・26の注目ポイントになる。【内匠宏幸】
(敬称略)