2月27日、1つのネットニュースに目が留まった。同26日に行われた静岡県中学選抜野球大会で長泉中の「女子エース」土屋愉菜投手(2年)が、1-0で熱海中を完封したという記事。女子の投手では、大会初の記録だった。試合の詳細などは省略するが、最速107キロの直球に変化球を交えるコンビネーションで凡打の山を築いたという。

 「ナックル姫」こと、吉田えり(現BCリーグ・栃木)や茨城ゴールデンゴールズの片岡安祐美監督、女子プロ野球界ではヤクルト川端の妹でもある川端友紀など、今や、女子選手の活躍は驚くことではないだろう。ただ、女子野球の現状まで知る人は少ないのではないだろうか。昨年の女子野球ワールドカップ5連覇を達成するなど、発展する「女子野球の今」を紹介する。

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 先日、都内で全日本女子野球連盟による本年度の事業計画、大会日程などが発表された。驚いたのは、女子野球選手の競技人口の増加と大会数だった。同連盟の資料によれば、女子硬式チームは高校23校(747人)大学7校(214人)、クラブチーム、未登録のチーム、女子プロ野球4チーム(65人)を合わせれば、登録者は約1811人。軟式、男子チームでプレーする女子選手を合わせれば、1万5000人以上にのぼるという。

 全日本女子野球連盟の長谷川一雄会長は「高校野球の強豪校が女子野球部を作って、強化を図っている。競技人口の増加とともに、レベルも上がっているし、今後が楽しみ」と説明する。高校では作新学院(栃木)、埼玉栄、神戸弘陵(兵庫)、京都外大西、福知山成美(京都)などが女子野球部を設立し、専用球場を持つ高校もあるという。

 大会で言えば、13年から学童女子の全国大会「NPBガールズトーナメント」が実施され、15年には全国女子中学生硬式野球選手権がスタート。16年には軟式の女子中学生の全国大会も始まった。高校生の大会では、今年も3月27日から全国高校女子硬式野球選抜大会(埼玉・加須)、7月28日からは全国高校女子硬式選手権(兵庫・丹波)が行われる。8月5日からはアマNo.1を決める全日本女子硬式野球選手権大会(愛媛・松山)で開催される。

 プロ野球を経験した男は、女子野球の魅力をどう感じているのだろうか。埼玉アストライアのヘッドコーチを務める元巨人の辻内崇伸氏は「元気があって、グラウンドを生き生きと動き回る姿は、女子野球の魅力の1つ」と話した。自らの少年時代も女子選手がチームに在籍したことがあったが、技術レベルは格段に上がっているという。

 冒頭、26日の試合を取材した本紙の大野記者によれば、昨年の大会では最速119キロの女子投手が登板したという。全日本女子野球連盟の長谷川一雄会長は「ぜひ、球場でプレーを見てほしいですね」と観戦を呼び掛けた。

【久保賢吾】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「野球手帳」)