大好きなおばあちゃんを甲子園に連れてきた。

 中京大中京(愛知)の背番号10・磯村峻平投手(3年)は、広陵(広島)との初戦で大事な先発を任された。この日最速141キロの直球と変化球を織り交ぜ、5回3分の1を3安打無失点と、大舞台で快投を見せた。2-0とリードを保ったままマウンドを譲ったが、続く投手陣が、爆発した広陵打線に打ち込まれ、終わってみると6-10。甲子園最初の試合が最後の試合となった。

 磯村は2年になった春からいつも「今日もお願いします。見ててね」と心の中で思ってから、マウンドに上がる。空の上にいる祖母・中田よ志子さんに向けての言葉だ。

 1年の秋、よ志子さんが突然倒れてそのまま亡くなった。磯村はおばあちゃん子だった。高校に入学してからずっと野球道具は全て、よ志子さんが買ってくれていた。試合の度に見に来てもくれた。「いい報告がしたい」と臨んだ試合。「自分の役割は点を取るまで点をやらないこと。それが出来た。悔いはないです」と晴れやかな表情で振り返った。

 「おばあちゃんも初めての甲子園で、楽しんでくれたと思います」。磯村の「見ててね」の願い通り、最後のマウンドも見守ってくれていたはずだ。【磯綾乃】