大阪桐蔭が史上3校目の春連覇を成し遂げた今年のセンバツ。今秋ドラフト1位候補として注目を集める大阪桐蔭・根尾昂内野手(3年)は大会通して打率5割、防御率0・69と驚異的な「二刀流」の活躍を見せた。

 智弁和歌山との決勝戦。あるシーンがあった。9回、根尾が最後の打者を一ゴロに打ち取ると、マウンドには選手たちの歓喜の輪が出来た。根尾はしばらく遅れて、1人ゆっくりその輪に加わった。ベースカバーに行った際に落ちた根尾の帽子を、智弁和歌山の選手が拾ってくれ、受け取ってお礼を言っていたためだ。

 「ナイスピッチ」

 「ありがとう」

 そんな会話が交わされていた。

 「根尾さん」。入学時から先輩にもそう呼ばれていた。今センバツ中には、チーム内で「根尾“様”」に格上げされたという。多数のドラフト候補がいる中でも、チームメートが一目置く存在だ。練習試合で他校を訪れた際、根尾が自動販売機でジュースを買っていた。「根尾さんも自動販売機でジュース買うんだ…」どこからともなくそんな声がもれ、周囲は笑いに包まれた。

 大阪桐蔭の有友茂史部長(53)は「自分の感情をコントロールできる。努力型です。吸収したものを考えて、自分で調べて身につけるタイプ」と話す。中学生の時に岐阜選抜で根尾とチームメートだった近江(滋賀)の北村恵吾内野手(3年)は「(攻守交代の際の)移動も、どのプレーも全力で、あいさつも礼儀も人間的に良くて、一流の選手の人間性を感じました」と刺激を受けた。

 普段は野手の練習に時間を割き、根尾の投球練習は1割程度。遊撃手として出場しながら、途中でリリーフとして登板することもあるが「肩はキャッチボールである程度できる」と、わずか数球で肩を温める。4日の決勝戦の中で、根尾は投手を務めながらも、打席に入る選手の元へアドバイスに行った。チームのために自ら動く「根尾さん」の姿があった。【磯綾乃】