「都立のドクターK」の東大和南(西東京)の吉岡桃汰投手(3年)は、ベンチで敗戦の瞬間を迎えた。同点で迎えた明学東村山戦の延長10回1死一、三塁、三塁走者がホームに生還すると、先頭でベンチからホームに向かった。「エースナンバーをつけているのに、投げられないふがいなさ。みんなに合わせる顔がないくらい、申し訳ない気持ちです」と涙を流した。

 春のブロック予選の淵江戦で22三振を奪って、一躍注目を浴びた。夏に向け、期待が高まる中、4月下旬に腰に違和感を覚え、6月上旬の練習中に悪化。約1カ月間懸命にリハビリに励み、初戦を迎えた。先発は山本に譲ったが、リリーフで登板予定だった。だが、試合前の約80メートルの遠投中に「グキッと音がした」と再発。「痛い時は正直に言いなさい」と言われた通り、高田監督に「投げられません」と申告した。

 試合前、先発の山本には「無理そうだから、9回まで頼む」と託した。それでも、他のナインを勇気づけるために、相手に故障を悟られないためにブルペンで軽めのキャッチボール。腰のコルセットを巻いた状況の中、腕を振った。ベンチでは最前列に立ち、仲間を鼓舞。投手の山本や打者に積極的に声を掛けた。

 ネット裏には、この日も4球団のスカウトが視察に訪れた。日大三時代に早実・清宮(日本ハム)から5打席連続三振を奪ったDeNA桜井を目標に挙げる左腕は「大学とか、上のステージでやることを考えています。先発したら、9回を投げきれる、ケガをしない体づくりをしたいです」と前を向いた。【久保賢吾】