双子で歩んだ12年間が幕を閉じた。倉敷翠松(岡山)の一卵性双生児、兄の本行宏生(こうき=3年)と弟の本行汰生(たいき=3年)。高校最後の夏が一緒にプレーした12年間の最後となった。

小学1年の10月から2人一緒に野球を始め、中学、高校と同じチーム。今夏は同校初の8強進出と快進撃を続け、倉敷商戦は兄宏生が「7番捕手」、弟汰生が「8番遊撃」で先発出場した。昨秋県大会王者に最後まで食い下がった。

双子ならではの、息のあった連係もあった。6回2死一、三塁の守備で一塁走者が二盗を試みた。キャッチャーの兄の二塁送球をショートの弟がマウンド後方でカットすると、本塁の兄にすぐさま返球。本塁を狙った三塁走者を刺した。弟汰生が「信頼して、兄弟で息が合った」と振り返り、兄宏生も「自分はキャッチャー、弟はショートでいつでも目線に入った。打順も前後、一緒に同じダイヤモンドに立って本当に気持ちよく野球ができました」と最高の笑顔を見せた。

高校卒業後はそれぞれ就職し、別々の道を歩む。兄宏生は「自分は悔いなく終われた。これで野球は終わりにして、次に気持ち良くいければいいかなと思います」。弟汰生は「就職するけど、野球が大好きなので。軟式であろうと硬式であろうと、野球は続けようと思います」。

最後の試合を見守った母和美さん(44)は「2人とも一生懸命、頑張ってくれた。悔いはないです」と誇らしげだった。「野球漬けの12年でした」と、これまでを振り返り「(2人のプレーを)見ているとすごく楽しかった。家族総出で、みんなで応援しました」。子どもは長女を含めて3人。父、母、長女で野球応援に出かけることが日課だったという。そんな生活にも一区切りで「寂しいですけど…」と本音も漏れた。充実した日々を与えてくれた2人へ「いろんな人に支えられてずっと12年間、野球人生をやってこれた。これからはいろんな人に感謝しながら社会人になってもらえたらと思います」と言葉を送った。

母の思いに応えるように、兄弟を代表して兄宏生が思いを言葉にした。「良いところに就職できれば親孝行できる。良いところに就職して、親を喜ばせたいなと思います」。感謝の気持ちを少しずつ、返していく。【奥田隼人】