日大三高は28日、東京・町田のグラウンドで年内最後の練習を終えた。今年で23回目、16日から始まった強化合宿最終日は気温マイナス1度で始まった。
12分間走、ジャンプトレーニング、ダッシュまでおよそ2時間半。1、2年生44人はひたすら走り、小倉全由監督(62)は常に選手の中に入り声をかけた。
この合宿は午前5時起床、午後9時半就寝。それを13日間。残った体力、気力を全て注ぐ。それを小倉監督、三木部長、白窪コーチと現役を引退した3年生や、OBが激励する。午前7時、右翼後方から朝日が昇る。小倉監督の「ハンディつけろ」の声が響いた。
日大三ではダッシュ時、タイムが遅い選手は2~3メートルほど前からスタート。着順を競わせ、意欲を高める。
小倉監督 どうしても足の遅い子は、速い子の後ろを追いかけるだけで、ただ本数をこなす走りになってしまう。ハンディでトップでゴールしても、それは1位だから喜べと言ってるんです。
遅い選手も1本1本を勝負として走り、速い選手は抜こうとする。工夫があるから流す選手はいない。
そして、フィナーレは4人が手をつないでの全力ダッシュ。ここで、センターにあったゴールを、ホームへ移動する。ホームの先には、スタンドでわが子の走りに見入る保護者がいる。
小倉監督 最後は保護者の皆さんにも、必死に走る子供たちの顔が見えるようにと。ここまで必死にやったんですからね。
力を振り絞る顔が、朝日に照らされる。泣きながら走る選手。ゴールして仲間と抱き合い、目頭を押さえる。自分と向き合った13日間。達成感を全身で浴びる瞬間だ。
「これをやり抜いた力は必ず試合で生きる。いいな! さあ、終わろう。お疲れさん。よくストレッチしとけよ」。小倉監督の言葉は短く、そして熱い。今秋の都大会は準々決勝で敗退し、選抜出場は逃した。2年生にとって甲子園へのチャンスは夏のみ。激しい真冬の強化練習。そのダッシュ1本1本は、真夏へつながっている。【井上真】