8強で打ち切りの兵庫大会の結末には、どんな光景が待っているのだろう。そんな思いを抱いて、7日、ほっともっと神戸での第1試合、神港橘-甲南戦を取材した。神港橘3点リードで迎えた9回裏2死でバックネット裏へ。決勝ではないが最終戦。歓喜の輪ができるなら、シャッターに収めたい。そう思ったが、結果は違った。神港橘・金丸(かねまる)夢斗投手(3年)は三振で試合を締めると、ゆっくりとマウンドを下り、目頭を押さえた。

「もっともっと試合がしたかった。明石商ともやりたかったですし…」。試合後のインタビューで胸の内を明かしてくれた。9回を投げ、野球人生で最多という17奪三振。それでも笑顔より、自然とこみ上げるものがあった。

安田涼監督(44)も同じ気持ちだった。「大変な時期を自分たちで考えミーティングして、乗り越えてきたチーム。勝ったけど、これで終わりっていうさみしさもあった。こんな感情ってなかなか味わえないよね」。

優勝旗はない。甲子園で戦うこともかなわない。それでも、勝って泣ける球児の尊い姿が、そこにはあった。【中野椋】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「野球手帳」)