3連戦中、ヤクルトの打撃コーチ・石井琢朗と話した。言わずとしれた往年の名選手だ。広島のコーチ時代に野球を教えてもらった。2位と好調なこともあって、まずは「ええ感じやん」という話から始める。そんな問い掛けに「おかげさまで」などという野球関係者がいないのは知っているけれど。

「何、言ってんですか。まだ始まったばかりでしょ。それを言うなら阪神だってまずまずじゃないですか。巨人が調子いいのは間違いないですけどね」。石井琢はそう返してくる。

首位巨人はこの日もDeNAに大逆転勝利を収め、貯金を「8」にした。しかしそのうちの「6」は阪神が献上している。「永遠のライバル」に対する阪神の負けっぷりが際立つだけで巨人が圧倒的に強いとも言えないのでは。そんなことを言うと石井琢も言った。

「そうですね。でもそれで言うならウチがなぜか広島にいいんですよ。まあ後半戦になったら反対になるかもしれませんけどね」

ここまでヤクルトは広島に5勝1敗と相性がいい。その広島はこの日、エース大瀬良大地の粘投で中日に競り勝ち、5割に戻した。4連覇を狙う広島がこのまま終わると思っている関係者もいないだろう。だからこそ石井琢の言葉も真実味を持っていた。

先日の広島3連戦で今季初めて甲子園にやってきた広島の指揮官・緒方孝市とも少しだけ話した。苦しんでるよね。そういう話に、緒方は平然とした顔をしながら言った。

「別に以前から圧倒的に強いチームでもない。いつも紙一重って言ってるじゃないですか。でもまあ確かに、今はね。とにかく置いていかれんことですわ。5割付近で粘って。それが大事でしょうね」

昨季まで3連覇を果たした指揮官の言葉は重い。同時にペナントレースの核心をついていると思う。野球は何があるか分からない。みんなそう言うが、結構、先が見えたとも思う。実際にそうなることも多い。しかし、やはり何が起こるか分からない。好投していた岩田稔があんな形で降板するとは。福永春吾にしても1死も取れないとは。

苦しい引き分けだろう。だがこれも野球だ。阪神は昨年のこの時期、2位だった。一昨年は首位。それで最後にどうなったかは、ご存じの通り。だからこそ、今はまず5割死守が数字上のテーマだ。(敬称略)

中日対広島 中日に勝利、ナインを迎える緒方監督(撮影・前岡正明)
中日対広島 中日に勝利、ナインを迎える緒方監督(撮影・前岡正明)