阪神対広島 低めに集める投球で広島打線を抑える阪神岩田(撮影・清水貴仁)
阪神対広島 低めに集める投球で広島打線を抑える阪神岩田(撮影・清水貴仁)

6月23日以来の甲子園。交流戦後は初めてだ。そこでのゲームに勝った。「六甲おろし」が鳴り響き、梅雨空を吹っ飛ばすような歓声がわき起こる。やはり甲子園での勝利は格別だ。そんな気持ちを味わいながら、しかし、少しだけ複雑な気分を感じた。

この日、阪神が広島を下したことでセ・リーグ6球団で貯金があるのは巨人だけになった。日を追うごとに面白くない状態になりつつあるということだ。巨人ファンは別にして。

こうなったのは広島、さらに阪神が交流戦からの不振を引きずっているのが大きな要因だろう。試合前、久しぶりに広島の指揮官・緒方孝市と少し話した。連敗が続き、4連覇を狙うチームは苦しんでいる。投打ともに不調だ。

「まあ阪神もいま、打ててないけどね」。そんな話をすると緒方は「それはウチもです。早い試合になってしまうかもしれませんね」。苦笑を浮かべ、話した。打線の湿る試合が続くと、どんな指揮官でも元気がなくなるものだ。広島は5割に逆戻りとなった。

最終的にどの球団がペナントレースを制するにせよ、このままの状態で、あっさりと巨人にゴールインさせていいわけがない。そんなことを思っていた試合で、しかし、いいものを見た気がした。

阪神岩田稔、広島大瀬良大地の両先発投手の試合に対する集中力だ。それを感じたのはマウンドではなく、お互いの打席でだ。

1点を先制されていた岩田は3回の第1打席をファウルで粘り、9球目で四球を選んだ。これが阪神の出した2人目の走者だった。対して大瀬良も5回、くしくも同じ9球を岩田に投げさせ、四球を選んだ。

現状、両軍打線の援護が少ないのは分かっている。それを嘆いていても始まらない。今、自分のできることをする。そういう気迫が2人から伝わってきた。

「先発投手というのは投げるだけじゃない。その試合を、その日のチームを背負っているんです。振る舞い、態度もそういうものにしないといけない」

そんな話を広島のレジェンド・黒田博樹から聞いたことがある。ともに6回で降板し、試合での白黒はついたが両投手を見ていて黒田の言葉を思い出した。

年齢や置かれた立場を超え、岩田や大瀬良のような投手がいるチームは簡単には落ちていかない。そう思っている。(敬称略)

阪神対広島 5回表広島2死、大瀬良は四球を選らんで出塁する(撮影・加藤哉)
阪神対広島 5回表広島2死、大瀬良は四球を選らんで出塁する(撮影・加藤哉)