阪神対ヤクルト 9回裏阪神1死三塁、サヨナラ犠飛を放った近本(手前左)にウオーターシャワーで祝福する阪神ナイン(撮影・上山淳一)
阪神対ヤクルト 9回裏阪神1死三塁、サヨナラ犠飛を放った近本(手前左)にウオーターシャワーで祝福する阪神ナイン(撮影・上山淳一)

よく勝った。と言うか、よく勝てた…というところだろうか。連敗脱出。サヨナラ勝利で終わった試合が最後までもつれた理由はいくつかあるだろうが「したたかさ不足」という点で阪神が1点をリードしていた5回裏の攻撃を挙げたい。

この回先頭の7番梅野隆太郎は左前打で出塁。ここで8番の木浪聖也は初球を打って投ゴロ併殺打に倒れた。2死走者なしで打席は投手の高橋遥人に回った。高橋は空振り三振。そしてチェンジになった6回表、高橋は2死から連打、四球で走者をためた後、2点適時打を浴びて逆転を許してしまう。結果的に7回まで2失点で踏ん張ったものの勝ち星はつかなかった。

「したたかさ不足」という面で、まずは木浪だ。無死一塁で次は投手という場面。もっとも避けたいのは併殺だ。安打が出ればもちろん最高だが、まずは梅野を先の塁に送りたいところ。どう考えて打席に向かったのか、というところだ。

「そうですね。頭の中が整理できないまま打席に入ってしまったかもしれません。悪くても引っ張って走者が入れ替わってもいい場面ですから。それを初球、ゲッツーはね。あれで流れが変わってしまいましたね」。ヘッドコーチの清水雅治はそう振り返った。

さらに言えば高橋だ。空振り三振に倒れるまでファウルで粘り、10球を投げさせた。結構なフルスイングでのファウルだった。若者の懸命な姿に好感は持てる。それでも1点リードということもあり、あそこはあっさりアウトになって6回以降のマウンドに備えてもいい場面ではなかったか。

「う~ん。打ちたかったんじゃないですかね。ハルトはバッティングが好きだから」。投手コーチの福原忍はそう苦笑した。

この点については清水も「精いっぱいやっているということですからね」と苦言はなかった。しかし打者を抑え、得点をやらないという本来の任務を考えればこの打席で体力を使ったのはもったいなく見えた。直後に失点しているので余計、そう思ってしまった。

試合で勝つには投打の好プレーが必要なのは言うまでもない。それと同時に場面ごとに応じた適切な動きをすることも欠かせない。レギュラーを若手に切り替え、生まれ変わろうとしているチーム。状況を読んだ上でのしたたかさという部分でも日々、成長していかなければならない。(敬称略)

阪神対ヤクルト 5回裏阪神無死一塁、木浪聖也は投ゴロ併殺に倒れる(撮影・上山淳一)
阪神対ヤクルト 5回裏阪神無死一塁、木浪聖也は投ゴロ併殺に倒れる(撮影・上山淳一)