巨人の指揮官・原辰徳はあと2勝で監督通算1000勝だという。名将ならではの数字だ。そんな原に東京ドームの試合前、あいさつした。律義にもこちらを覚えているだけでなく「ああ。こんにちは! お疲れさまですね」。大阪から東京までやってきたこちらをねぎらう言葉まで返してくる。

原と少しだけ話したのは7月8~10日から甲子園で行われた阪神-巨人のときだった。そのとき球界全体について、こんな趣旨のことを話していた。

「広島がそんなに負けているとはどうにも想像できないんですよ。広島は弱くないでしょ。しばらく対戦していないんで想像ができないんですよね」

当時、広島は最終的に「11」まで続いた連敗の真っ最中だった。どうしたのかと困惑するほどの負けっぷりだったが原だけは違う見方をしていた。「長い間、戦っていないので分からない」。そういう話だった。

その時点で巨人は5月26日を最後に広島と11試合を戦い、4勝6敗1分けと負け越していた。原にしても3連覇を続けている広島はやはり強いな、という印象を持っていたはず。

そして交流戦や球宴、それぞれのブレーク期間を挟み、約2カ月ぶりに対戦した今月19日からの広島3連戦で巨人は3連敗を喫した。名将は慢心せず、常に危機感を持っているものだし、巨人にすれば残念ながらそれが的中してしまったということだろう。

巨人の話ばかり書いているが、もちろん、阪神のことである。当初はもう少し2軍での調整をさせる予定だった新加入のソラーテ。打線の湿りっぷりにしびれを切らし、この東京ドーム、この巨人戦からギャンブル的に1軍起用を決めた。そんな助っ人が決勝2ラン。エース菅野智之をたてた巨人を接戦で破った。

セ・リーグの灯を消すな。そんな思いで広島は復活したし、阪神だってこの勝利で乗らなければウソだろう。あと2勝で1000勝。直近の2試合は阪神戦である。その事実を虎番キャップの囲みが解けた指揮官・矢野燿大に問うてみた。

「それは関係ないですけどね。ボクは全部、勝ちたいだけなんで」。そういう矢野の代わりにヘッドコーチ清水雅治が言葉を継いだ。「ここで達成させるわけにはいかない。そういうことです」。ゲーム差も順位も関係ない。まずは1つ勝つこと。現時点で阪神のミッションはそれだ。(敬称略)