9回裏阪神無死一、二塁、大山悠輔は右越えサヨナラ3点本塁打を放つ(撮影・宮崎幸一)
9回裏阪神無死一、二塁、大山悠輔は右越えサヨナラ3点本塁打を放つ(撮影・宮崎幸一)

4月末から5月始め、今季初めて広島を甲子園に迎えた3連戦の頃だ。広島の球団本部長・鈴木清明と雑談したことを記憶している。話題は広島の豊富な外国人戦力についてだった。

開幕から5カード連続で負け越すなど序盤に苦しんでいた広島だがバティスタが3番に定着し、復調気配を見せていた。そのときメヒアは2軍にいた。昨季ウエスタン・リーグで打率、本塁打、打点の3冠王を達成している男だ。それ以前にそのパワーを見知っているこちらとしてはこんな冗談を飛ばした。

「鈴木さん。メヒアが余ってるんなら阪神に譲ったら結構、もうかるんじゃないですか。金銭トレードとかができるのならね」

阪神は開幕から1軍にいたナバーロと交代でマルテを登録したばかりだった。マルテはオープン戦期間中の3月に右ふくらはぎの張りを訴え、1軍登録が遅れていた。いずれにしても昨季のロサリオに続いて今季も外国人補強に陰りを感じさせていた。メヒアが来ればいいのに。そう思っていたのは本心だ。そこで鈴木は何と言ったか。

「そんなんダメよ。メヒアはな、サポートなんよ。バティスタの。ダメになったらいつでも交代できるじゃろが。もっと言えば長野(久義)も若手野手のサポートという意味合いもあって獲得しとるんじゃから」

そういう話だった。現在はバティスタ、メヒアとも1軍のスタメンに名を連ね、逆転4連覇へ戦力になっている。広島の用意周到さ、おそろしさを思い知らされる話だ。

今季106試合目で4番から外された大山悠輔が逆転サヨナラ3ランを放った。借金生活に苦しむ指揮官・矢野燿大がこだわりを捨てた結果は「吉」と出た。理想を言えば、これを契機に大山が4番打者への道を再び歩み始めれば、それがベストだろう。

だけどあえて少し寂しい気がしたとも言わせてもらう。大山の代わりがマルテだった点だ。育成を願う若者を外すのなら代わりも若者に務めさせた方がいいのではないか。高山俊、原口文仁。あるいは北條史也。守備面が問題になるのなら大山をベンチに置くことも考えて、だ。育成と言うことでは同じだろう。

「大山4番プラン」がA案ならそれをサポートするB、C案はどうなっているのか。大山に期待すると同時に冷徹に次策を考えることは来季への課題だ。(敬称略)

笑顔で選手を迎える矢野燿大監督(右)(撮影・奥田泰也)
笑顔で選手を迎える矢野燿大監督(右)(撮影・奥田泰也)