「さすがにこれでは厳しいですね」。長期ロードを終えて甲子園に戻って最初の27日は年に1度「夕暮れ球場縁日」が開催された日でもあった。毎年、たこ焼きやかき氷、くじ引きなどで楽しむ恒例企画だ。

しかしこの日は午前中から雨が降り、午後4時10分に中日戦の中止決定が出るまで降ったりやんだり。客足にも影響が出て、例年なら行列もできるのだが、この日はかき氷コーナーなど閑古鳥が鳴いていた。

「厳しいですね」。そう嘆く球団職員と雑談していると別の心配も口にした。鳥谷敬のことだ。別に閑古鳥から連想したわけではないだろうがこんな話だった。

「グッズ関連で鳥谷選手の人気はやはり高いですね。生え抜きで長い間、やってきて、顔というかルックスもいい。万が一、それがなくなるとすれば影響は大きいと思いますよ」

25日のヤクルト戦終了後、鳥谷が「自分もこれが最後になるかもしれない」と話したことから周囲がざわついているのは周知の通りだ。神宮は早大時代から慣れ親しんだ球場。それだけにそのセリフが重みを伴って波紋を呼んでいる。5年契約の最終年。現状の起用法。そして鳥谷自身の状態を見れば「いよいよか…」という思いを持つ虎党がいてもおかしくない。

だが簡単ではない。若手、特に野手が育たないと指摘される阪神にすれば早大からドラフト1位(当時の自由獲得枠)で入団、ここまでになった選手は近年、いない。完全な「生え抜きの功労者」だ。だからこそ「去就」については本人の考えをしっかり聞いて判断しなければ、と幹部は考えているのだ。

鳥谷にプレーを続けてほしいと思うのはファンは言うまでもなく、営業関係もそうだ。さらに相手選手にもいる。「鳥谷が目標」と言い切るのは中日の遊撃手・京田陽太だ。この日、室内練習場に姿を見せた京田に「今更だけど…」と聞いてみた。鳥谷のどこに引かれるのか。

「ケガをしないところです。故障をしないで試合に出続けてきた。この世界、試合に出てナンボですから。高校に入ったときぐらいから鳥谷さんを目標にしています。まだまだやってほしいですよ、そりゃあ」

鉄人であることがプロの証し。正しい見方だ。しかし過去、どんな鉄人にも終わりは来た。それがいつ、どんな形になるのか。やはり気になるところだ。(敬称略)