ここまできて指揮官・矢野燿大の采配や選手起用について、どうこう言う気はない。シーズン中からそこは監督の専権事項ということは何度も書いてきたし、ましてや終盤の奇跡的な勝ちっぷりで東京ドームに来ることができた。それでもこう思った。「北條を使ってほしいよな」。

試合前、知り合いの熱心な虎党がこんなメールを送ってきていた。「北條がいなければファーストステージ突破はなかったです」。DeNAとの激闘の3試合を終え、チーム全体が盛り上がっていた。それで焦点がぼやけていたがDeNAとの決戦におけるラッキーボーイは間違いなく北條だ。

6点差をひっくり返して勝った5日のDeNA戦は3ランに逆転の勝ち越し三塁打と大暴れ。負けた2戦目も反撃開始の二塁打を放っている。さらに言えば3試合目は7回に同点にされる適時失策をやらかしたが試合に負けなかった。流れは明らかに北條に来ている、と思っている。

しかし、この日はスタメンを外れた。直接の要因は山口俊対策で木浪聖也を遊撃に入れたからだ。しかし7日DeNA戦のように三塁で出るプランはある。大山悠輔が山口を打っているのか、と思ったが北條とともに巨人が今季誇った右腕からは打っていない。

試合前、一塁側ベンチで巨人の坂本勇人にあいさつした。堂々のMVP候補である。「あっ。こんにちは!」と握手してくれる。スターだけど好青年だ。調子はどないですか。そう聞くとこんな答えをした。

「めっちゃ、もう、めっちゃ普通です!」。ははあ。「普通」に「めっちゃ」がつくのは日本語としてどうなのかと思うけれどこれは本音かもしれない。坂本だけでなく、王者・巨人にすれば「普通」にやることが日本シリーズへの近道だろう。

阪神はそうではない。挑戦者はなりふり構わず向かっていかなければいけない。だからこそ矢野にしても「赤いパンツをはく」などという験担ぎを明かしているのだ。

もちろん大山の起用には意味があるはず。想像だがガッツが前に出てこないタイプの大山に奮起を促しているのかもしれない。それでも、やはり、今乗っている北條をベンチに置いておく手はないと思う。短期決戦は流れが大事なのは誰でも知っていることだ。とにかく1勝。3連敗で終了は面白くない。(敬称略)

巨人対阪神 9回表阪神2死満塁、北條の押し出し四球に笑顔をみせる矢野監督(撮影・清水貴仁)
巨人対阪神 9回表阪神2死満塁、北條の押し出し四球に笑顔をみせる矢野監督(撮影・清水貴仁)