監督、選手らがPCR検査を受けたと阪神が発表した。開幕まで1週間。例年とまったく違う状況の中でも、いよいよ準備が整ってきた感じである。

コロナ禍による自粛生活で気持ちが落ち込みがちになった人は多いだろう。こちらもどちらかと言えばそのタイプだ。しかし逆に必要以上に他人とコミュニケーションを取らなくてもいいし、快適と感じていた人もいるそうだ。それも分からなくもない。物事には常に両面がある。

来週の今頃は開幕戦の結果が出ているころだ。巨人菅野智之を打てているか、どうか。ボ~ッとそんなことを考えていると、阪神前監督・金本知憲の言葉を思い出した。

「2番手以降の投手はそこそこ打つがエース級にはどうもね…」。現役時代、主戦投手を相手に特に燃えていた金本は監督として率直にそんな話をしていた。だから筋力アップなど基礎的な力をつけさせ、若手選手にまずは体力面から相手に負けないようにと試みたのだった。

現在の指揮官・矢野燿大は言葉で前向きに選手をもり立てていくのが最大のポリシーだから「エース級が打てん」などとは口にしない。だが昨季、538得点はリーグワーストだったのは事実だ。12球団でもパ・リーグで最少だったオリックス(544得点)にも負けている。

だからこそ球団は思い切って新外国人を2人、獲得した。マルテも残した。言うまでもなく得点力アップが狙いだ。だが外国人選手が多くなると失うかもしれないものがある。走力、機動力を中心にした戦いだ。これは2軍監督時代から矢野が目指していたスタイルである。重量打線にすれば、機動力は…。物事には両面がある。

そんな中、光明を見た思いがしたのがこの日の梅野隆太郎のプレーだ。好投手であるオリックス山岡泰輔から5回に奪った2点目は2死から安打で出塁した梅野の好走塁が大きかった。そして9回、結果として同点に追いつく安打もディクソンから放った。

捕手として強肩、どんなワンバウンドの球でも後ろにそらさない技術を兼ね備える梅野。そんな正捕手が攻撃面で安打を打つことに加え、いつでも走ってやる! という姿勢を見せ続ければ。外国人選手が中心になる今季の打線の中でも、これは、かなり心強い思いがする。(敬称略)