阪神の危機とは何か。新加入のボーアがまるで打たないことか。もちろん今季の勝敗にとってそれはとても大きい。しかし、もっと危ない部分は別にある。次代を託す若手がなかなか見当たらないということだ。

阪神期待の若手野手。そう言えば、大山悠輔、高山俊の名前が上がるのではないか。出場機会を含め、この3連戦でまったく目立たなかったこの2人だが、実はさほど若くはない。

大山は大卒4年目。今年26歳になる。高山はその1つ上。同じく大卒5年目で27歳になった。年齢的には間違いなく若いが、一般の社会人でも、そろそろ一人前に仕事をしてほしい頃だろう。ましてやプロ野球の世界である。

広島だけでなく今や日本の主砲となった鈴木誠也は大山と同じ学年だ。この日、逆転弾を放った巨人岡本和真は今月30日で24歳と、さらに若い。もちろんこの2人は大成功の部類だ。だが20代半ばといえば、どこでもチームの中心になってほしい年齢のはずだ。

阪神の場合は福留孝介、糸井嘉男とベテラン2人が中心選手でいる。だから何となく若手に見えるが実はそうではない。投手の左右や好不調の波で出たり出なかったり。起用する方の考えもあるのだが、周囲を納得させる結果を出せるなら誰も文句は言えない。

問題になるのはこういうことだ。伸び悩む2人に続く若手野手は誰なのか。正直、候補者は多くない。そんな中で注目しているのがルーキー・井上広大だ。ファームでは20日、鳴尾浜で行われたNTT西日本とのプロアマ交流戦で初のバックスクリーン弾を放ったという。最速150キロ右腕・大江克哉の外角ストレートをとらえたそうだ。

「伸び伸びやっているのがいいのでは。高卒1年目だし、そういう方針だと聞いています。元々、タイミングの取り方、ボールを呼び込む感じがいいものがありますから」。春先に話した担当スカウトの渡辺亮はそんなことを言っていたが、本当に伸び伸び打っているのだろう。

だから1軍で使え、といえば笑われるかもしれないが、結構、真剣に考えている。「伝統の一戦」は3連敗スタート。指揮官・矢野燿大の采配についても考えるところはあるのだが巨人とはやはり選手の力量差を強く感じた。勝敗同様、あるいはそれ以前に、誰か期待を抱かせるヤツが出てきてくれ。そんな思いだ。(敬称略)

巨人対阪神 6回表阪神2死満塁、二ゴロに倒れ険しい表情を見せるボーア(撮影・河野匠)
巨人対阪神 6回表阪神2死満塁、二ゴロに倒れ険しい表情を見せるボーア(撮影・河野匠)