梅野が出てきたかと思ったら梅野雄吾だった。ヤクルトで勝ちパターンの救援投手として重宝されている。「梅野対決やな。そんなに平凡な名字でもないと思うけど」。昨季のヤクルト戦のとき、梅野隆太郎にそんな話をした。

「そうなんですよ。しかも、彼、福岡出身なんでしょ。ボクと同じなんですね。でも全然知らないんです。年齢も違いますから」

なんてことのない会話だが梅野は付き合った。こういう雑談ができる選手は、実は若手には多くない。雑談が野球の役に立つかどうかは不明だ。でもいろいろな人間の話を聞くのは大事かも。そう思っている様子の梅野は懐が深い。

そう書いたが原口文仁、坂本誠志郎も好青年だ。病魔を克服した原口の努力は言うまでもないし、坂本もオフにダルビッシュ有に捕球技術を褒められたことで有名になった。ともに性格も真っすぐ。全員、かなり好きな選手だ。

そんな3人が、今、虎党を中心に何とも言いようのない注目を浴びている。もちろん今季、ここまでの「阪神日替わり捕手問題」についてだ。

現状、阪神の正捕手は梅野だと思っている人は多いのではないか。2年連続ゴールデングラブはダテではない。思い切りのいい打撃に加え、ワンバウンドをそらさないフィールディング。相手に盗塁する気を失わせる強肩。多くの点で高いレベルの捕手だ。

だが今季は開幕から5試合、すべてスタメンマスクが違う。梅野-原口-坂本と来て、前日ヤクルト1回戦は梅野で勝ったので、どうするかと思っていたら原口だった。秋山拓巳が今季初先発する25日は坂本になるのだろうか。

以前から書いているが作戦、用兵は指揮官の専権事項だ。周辺がどうこう言っても仕方がない。投手の投げやすさを優先しているのか。1人の負担を減らそうとしているのか。いずれにしても決めるのは監督。考えがあってやっているのは間違いない。

それでも思うのは、このやり方で結果が出なければ全員がつらいのでは…ということだ。虎党は「なんで梅野を使えへんねん!」と思うだろうし、梅野が疲れたりアクシデントがあったりしたときに出場するなどで脚光を浴びるはずの原口、坂本も正しい評価を受けられなくなる。2カード連続負け越しは避けたい25日。1つの注目点だ。(敬称略)【高原寿夫】