阪神、そして広島というチームを象徴する試合になった。西勇輝、大瀬良大地の両開幕投手の投げ合いはさすがだった。どちらも序盤にソロ被弾で1失点したがその後はピンチを迎えても粘り強い投球だった。最後は大瀬良に軍配が上がったがいい投手戦だった。

そんな試合は終盤に分岐点が来る。この日は7回がそれだ。接戦を取った広島は1-1の7回裏、1死二塁で代打に坂倉将吾を送ってきた。日大三から広島に入って4年目、22歳の若者だ。捕手だが、何より打撃センスが知られている。

対して阪神だ。同点の7回表、1死満塁で西に代え、福留孝介を打席に送った。43歳、日米で活躍してきた球界最年長である。

結果はご承知の通り、決勝適時打の坂倉に対し、福留は併殺打。若手とベテランで明暗が分かれた。

広島の特徴は言うまでもなく「育成力」にある。この阪神戦で知られるようになった羽月隆太郎のように若い選手をポイントで思い切って起用する。これは伝統的なものだ。

「今だけが大事じゃないんですよ。ウチはドラフトで取った選手を育てて、その選手がバリバリやっている間にファームで次のレギュラーを奪うヤツを育てている。その繰り返しです」

そう言ったのは広島3連覇監督の緒方孝市(現日刊スポーツ評論家)だった。3連覇でチームが乗りに乗っているとき「しばらく安泰やね」という話をしたときの答えがそれだった。

主力選手がFAなどで抜け、勝てなくても「育成の時期」と受け入れる広島ファンの土壌もある。阪神には地元メディアの視線を含め、巨人同様、12球団でも最大級に勝敗が注目される難しさがある。

前監督・金本知憲時代から広島同様、育成路線にシフトしつつある阪神だが、それまでのFA選手、外国人による補強という流れにより、ベテラン頼みの現状はやはり否定できない。

「だからあかんのでは」とは誰でも言えるが、ベテランにはベテランの力があるし、苦しい場面で活躍することは必ずある。

大事なのは先輩を追い落とす若手の発奮、勢いだ。そこに負けじと踏ん張るベテランいう競争を期待したい。その部分で新しい名前が出てこない今季の阪神が物足りないのは事実だ。もちろん、どの球団でも重要なのは首脳陣の“見きわめる力”なのは言うまでもないが-。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)