2年目の小野寺暖がプロ初スタメンを経験した。現在、ウエスタン・リーグの首位打者。前日8日に1軍に上がった。上げたのなら使わなければ意味がない。打者9人制を敷けるパの本拠地で日本ハムは左腕・加藤貴之の先発。それもあっての起用だろう。首位を走っている中での若手起用は意味がある。

「7番左翼」でスタメンの結果は、しかし、4打数無安打。快音は出なかった。それはそれでいい。佐藤輝明のように入団1年目から活躍できる選手の方が異例なのだ。すべてが経験、勉強だろう。

そこで1つだけ感じたことを書いてみたい。6回、2死一、二塁で清水優心が左前に強いライナーを放った。小野寺はこれを取るべく猛然とダッシュ。最後には体を投げ出すようにダイブ、捕球にいったがショートバウンドでグラブに収まった。先発・秋山拓巳にとっては3失点目の適時打となり、ここで降板した。

このプレー、いかにも若々しさがあふれていて好感を持った。「絶対とったる!」と思って飛び込んだのだろう。しかし試合展開を見れば、この時点で阪神は7点をリードしていた。左前打なら1点は入るだろうがそこまで。もしあのダイブで後ろにそらしていたら一塁走者まで生還し、さらにピンチが広がっていたかもしれない。

この試合、焦点は守備だったと思う。1点を先制された2回の攻撃、無死二塁から佐藤輝明の右飛を処理した近藤健介が三塁へ大暴投し、労せずして同点。日本ハムは5回にも三塁・郡拓也が悪送球する適時失策があった。

守備の乱れは阪神だけでなく、痛い結果を生む。もちろん小野寺のプレーは闘志の表れだ。それでも試合状況を把握し、ここはイチかバチかで飛び込む場面、ここは安全に処理するところという判断をし、それに応じてプレーするのも1軍では重要だろう。

「バッティング練習のとき、大山さんにいつもサードから『力抜け』と言われていました。バットももらいました」。5月中旬に日刊スポーツのインタビューに応えた小野寺はこんな話をしていた。

力を抜け。主将・大山悠輔から言われた言葉は金言だろう。打席の話だけではない。心にやる気をみなぎらせ、プレーではリラックスする。若い選手にはこれが難しいのだが成長するには必要なことだ。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)