10日の昼間に行われた全日本大学野球選手権(神宮)の準々決勝で関学大が慶大に負けた。前回の東京オリンピックが開催された64年以来の準々決勝進出だったという。そんな要素もあってOBでも何でもないけれど注目していた。東京の人は「そうなんだ?」と苦笑するかもしれないが関西では関学大は慶大に近い位置付けか。「KG」なんて略したりする。

「関関同立」中心の関西学生リーグに所属する関学大だがプロ野球OBは近大に比べると多くない。その数少ない「OB対決」がこの夜、関西から遠い札幌ドームで実現した。阪神1点リードの7回、ベテラン左腕・宮西尚生が4番手で登板。簡単に2死を取った。しかし近本光司が右翼席へ放物線を描く中押し4号ソロ。これが効いた。

個人的にもっとも印象に残るOBは田口壮だ。現在、田口がコーチを務めるオリックスの黄金時代だった90年代半ば、ブルーウェーブ担当記者として毎日のように話をした。高卒、大卒の違いはあったがイチローとは91年のドラフト同期入団。田口が1位だ。イチロー同様にのちに大リーグにも挑戦。カージナルスとフィリーズで、イチローが手にできなかった「世界一」メンバーに2度までも輝いている。

近本が入団した年だったか。阪神-オリックス戦のオープン戦前、田口に「関学大のベストOBは誰なん?」と聞いてみた。謙虚な田口は「そら、宮西でしょ」と言った。別の機会に宮西にも同じことを聞いた。「もちろん田口さんです」と笑顔だった。

いま“そこ”に挑戦するのが近本だろう。宮西とは19年に2度対戦し、2三振。そのリベンジを果たした。近本が打つとチームが乗ってくる。俊足で忘れた頃に1発を放つ。いいリードオフマンだ。

田口、宮西と同じく関西人。出身の淡路島ではヒーローだろう。近い将来、兵庫・西宮市出身、近大卒の佐藤輝明とシーズンを通して1番、4番を組めば甲子園を本拠にする阪神にとって、こんなに楽しいことはない気がする。

ついでに大阪出身・藤浪晋太郎がエースになれば…とまた夢想が出てしまう。8回、なかなかのセットアッパーぶりだった。いい形で交流戦初の3連勝をマークした阪神。強い楽天に勝ち越すことは簡単ではないが最後に貯金をつくってリーグ戦に戻れば最高だ。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)