4番の問題だけではないという話だ。「4番争い」を展開する大山悠輔、佐藤輝明の2人がそろって楽天との練習試合に出場。3番でレフトを守った大山は2回にスライディングキャッチを見せるなど奮闘していたし、「4番サード」の佐藤輝も近大時代の定位置がしっくりきている様子だ。

4番と同時に守備位置も争う形なので、あらためてだが大山にすれば佐藤輝は“やっかいな後輩”のはず。それでも仲良くやっているのは上下関係に厳しくない現在の球界のムードを表しているようだ。

「オレからすれば複数ポジションを守ってくれるのはありがたいよね」。監督就任時から話す指揮官・矢野燿大の方針だ。阪神だけの話でもない。それが球界の進化なのか、いまひとつ面白くない方向に向かっているのかは難しいところだと思うけれど。

その流れでいけば4番かそうでないかも、さほど大きなことではない気もしてしまう。それでもやっぱりプロ。あのイチローですら打者を評価するのに「4番らしいね」と表現するところを聞いたことがある。やはり4番打者に座るのは意味があるのかもしれない。

そこで。仮に大山が4番になったとして佐藤輝はどこを打つのか。3番か5番か、あるいは昨季序盤のように6番以下なのか。2人に加え、主軸を打つのはマルテ、そしてこの日、スタメンで結果の出なかったロハス。さらにベテラン糸井嘉男という辺りだろう。

各自の調子、相手との相性で組み替えていくのかもしれないが、そうなると昨季とあまり様子が変わらないことになる。できればクリーンアップはしっかり固めて戦いたい。

先日、宜野座キャンプを視察した「代打の神様」桧山進次郎(日刊スポーツ評論家)は「いまのチームで3番に向いているのは近本光司」と話した。最も打撃が安定しているというのがその理由だが「そのとき1番はどうするのか」という問題も示した。

4番打者さえ決めれば…というチームでないのも事実だ。「挑戦」を前面に出してやってきた矢野の4年目。過去3年、優勝こそできていないが結果は悪くない。その「最後のカベ」を破るためには。クリーンアップを中心にしっかりスタメンを固め、自身が理想とする「監督が何もしなくていいチーム」にできるかどうか。そこが重要なのではないか、と思う。(敬称略)

阪神対楽天 1回裏阪神1死三塁、先制の中前適時打を放つ大山(撮影・前田充)
阪神対楽天 1回裏阪神1死三塁、先制の中前適時打を放つ大山(撮影・前田充)