「野球の話ができたらいいなあ…」。今季初白星にそう思う。指揮官・矢野燿大が今季限りで監督を引くと明かし、始まった異例のシーズン。どう転ぶかは注目点の1つだった。そこでリーグワーストの開幕9連敗。大コケだ。

現時点で言えば失敗だろう。多くの評論家が指摘するようにマイナスに働いているのか。「自己満足」と言われても仕方がない。ここから大逆転劇のシーズンにできれば、また見方も変わるのだろうが、とりあえず強い逆風が吹いている。

だけど思うのは最近の「矢野やめろ」の嵐は何だろうということだ。「ふがいない。見たくない」というのはともかく「阪神が盛り返すには矢野がやめるしかない」というような意見さえ一部虎党の間でもメディアでも見受けられる。

誰が何を言うのも勝手だけど、正直、「そんなことあるかな?」とは感じる。敗戦が続くのは投手陣が落ち着いていないなど負ける要因があるからだ。もちろん守護神ケラーの“見切り発進”などの起用を含め、結果責任は監督にある。

その部分で「矢野が悪い」と言うのは正解かもしれない。元気がない様子なのも気になる。そんなことで勝てるのか。ムードが悪くなる。そうも思う。だけど、別に矢野の肩を持つ気はないけれど、やっぱり選手が奮起しなくては試合には勝てない。先発・西勇輝が本来の投球を見せ、主砲・佐藤輝明が1発。これなら勝つという話だ。

矢野が“アレ”を言った時点から書いているが、誰が監督でも選手は自分が働かなければ年俸は上がらないし、家族にいい思いをさせることもファンを喜ばせることもできない。普通の会社でも上司に関係なく、やる人はやるだろう。少なくともプロ野球はそういう集団のはずである。

その今季1勝目は手放しで喜べない内容だった。3回以降は1安打で無得点。走者を出しながら攻めきれないDeNAの拙攻に助けられた面もある。5回に犠打できなかった中野にはしっかりしろと思うし、それ以前に近本光司の足で攻めてほしかった気もする。

負けが込めば監督人事の話になるのは避けられない。特にそういう“文化”のある阪神だ。だが、まだ4月。巻き返しに全力で戦うナインを見たいし、ラスト・イヤーを必死で采配する矢野も観察したい。そんな「野球の話」をしたいなと思っている。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)

阪神対DeNA DeNAに勝利しスタンドのファンにあいさつする阪神矢野監督(右)ら(撮影・上山淳一)
阪神対DeNA DeNAに勝利しスタンドのファンにあいさつする阪神矢野監督(右)ら(撮影・上山淳一)
阪神対DeNA DeNAに勝利し、阪神矢野監督(左)はナインを出迎える(撮影・上山淳一)
阪神対DeNA DeNAに勝利し、阪神矢野監督(左)はナインを出迎える(撮影・上山淳一)