微妙な試合だった。打線低調だったときの様子で阪神は今季7度目の「0-1」敗戦だ。それでも放った7安打はこのスコアでの敗戦としては最多タイだ。4月20日のDeNA4回戦と並んだのだがその試合は延長10回。ソトにサヨナラ弾を浴びて負けたので9回としてはもっとも安打が出た形ではある。

それがどうした? と言われればそこまでなのだが本当にダメなときの「完全に抑え込まれた」という感じとは少し違う気はする。好投手・東浜巨を相手に食い下がった。

最大のチャンスは4回2死一、二塁で糸原健斗が右前打を放った場面。二塁走者の近本光司は果敢に本塁に突っ込んだ。中村晃のバックホーム送球は三塁側にそれたが、これを捕球した甲斐拓也にうまくタッチされて憤死。次打者が糸井嘉男だし、止めていても…という見方もあるかもしれないが、やはり「超積極的野球」なら突入だろう。

反対に仕掛ければいいのに…と思ったのは1回、そして6回だ。1回はいきなり島田海吏が左前打で出た。クリーンアップに期待して2番・中野拓夢は手堅く犠打で攻めたが、せっかくの俊足トリオ。足を使った作戦で揺さぶってほしかった。6回、1死から中野が出たときも同様だ。東浜相手だからこそ思い切り積極的にいってほしかった。

選手起用も思い切りのいいところとそうでない場面があったようには思う。ファームから上げた高寺望夢を即スタメン起用したのはよかった。使うために上げたのだから3打席目まで立たせたのは正解だろう。

反対にスタメンマスクは、やはり梅野隆太郎ではと思った。故郷・福岡での試合に合わせ、1軍復帰。前日は西勇輝と組んでソフトバンク打線を無失点に抑えた。その勢いに期待してほしかった。坂本誠志郎が悪いわけではないし、体調を考慮したのかもしれないが“流れ”を考えれば梅野だったのではと思う。

「もちろん点取りたかったし、勝ちたかったけど、そういうのも受け止めていかなあかん試合かなと思います」。連勝が「6」で止まり、現実を受け入れたように指揮官・矢野燿大は話した。いずれにしても敵地・福岡でソフトバンクに3連勝-というのは、正直、甘い。勝ち越せれば御の字だろう。だからこそ3戦目が重要である。ここで勝つことができれば上昇ムードは続くはずだ。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)

ソフトバンク対阪神 4回表阪神2死一、二塁、糸原健斗は右前安打を放つ、二塁走者の近本光司が一気に本塁をつくがアウト(撮影・梅根麻紀)
ソフトバンク対阪神 4回表阪神2死一、二塁、糸原健斗は右前安打を放つ、二塁走者の近本光司が一気に本塁をつくがアウト(撮影・梅根麻紀)