「えっ?」と思った。そう言うのも失礼だがびっくりしたのは確かだ。25日、大阪市内のホテルで開催された阪神OB会総会。そこに登場した“ある人物”を見たときだ。安仁屋宗八。79歳。白いもみ上げ、ヒゲを蓄え「おお。久しぶり」と柔和な表情を浮かべた。

沖縄出身者としては初のプロ野球選手。地元では「レジェンド」として尊敬される。カープ戦で広島に出張し、マツダスタジアムで顔を合わせたときは気軽に話してくれる人だ。諸般の事情で00年にこちらが1シーズンだけカープ担当をしたときは草野球の仲間に入れてもらい、彼が投げるバックを守った記憶もある。

1964年(昭39)に広島入団。75年に阪神にトレードされ、同年に最優秀防御率のタイトルを獲得している。80年に広島に復帰。現役最後の2シーズンをカープで過ごした。「広島-阪神-広島」は偶然にも現在の広島監督・新井貴浩と同じ流れだ。

従って安仁屋は阪神OBでもある。驚くことはないのだが“広島色”が濃く阪神のOB会で顔を見かけたことは、こちらが知る限り、なかった。それが突然の登場。「めずらしいですね」-。そこで、いかにもという話を聞いた。

「いやあ。岡田(彰布)に日本一のお祝いを言いたかったしね。まあ、こっちに会いたい人も多いんだよ。それにあいつと“約束”もしたしな…」。そう笑顔を浮かべた。

広島で指導者などを経て現在は中国放送で解説者などとして活動する一方、安仁屋はカープのOB会長を務めていた。だが年齢などもあり、21年限りでその地位を引いている。そこについて言及してきたのが親交のある阪神OB会長・川藤幸三だったという。

「安仁屋さんがやめたんならワシもやめます」。川藤はそう伝えてきたと安仁屋は明かす。「おまえはまだ若いやろ」と言いながらも「そう言うなら、おまえが会長のうちにそっちに顔を出す」と約束。今回、それを実行したのだという。

【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)

「新幹線代、ホテル代はご自身で負担されています」。下世話な話だが関係者がそう教えてくれた。かつての所属球団を祝う気持ち、そして慕ってくる後輩との約束を“自腹”で守ったということだ。旧交を温めた。言ってしまえばそれだけかもしれない。それでも、こんな時代に「昭和のサムライ」の香りをかいだ気がする夜だった。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)