「よかったです! ホッとしました~」

 5月12日、東都大学野球リーグ戦、日大対中央大戦の試合後、胸をさすりながら満面の笑みで話してくれたのは日大の千葉翔太君(日大・3年・外野手)でした。

 そう! 2012年、夏の甲子園に花巻東の1番バッターとして出場。バスターのような構えから三塁側にファウルを打つカット打法が話題になった選手です。

 今季の東都大学野球、秋季リーグ戦では、初戦の国学院戦では公式戦初スタメン、初出場も2打数0安打。翌日の2回戦では1打数2四球。その後、しばらくベンチを外れ、復帰した今日。1回2死満塁から左前打で4点目をたたきだし、大学初安打、初打点はチームを勝利に導きました。

 昨年、秋のリーグ戦ではボールボーイ。

 「選手層が厚くなって、メンバーから外れてしまいました…。でも、負けません!」と言っていた千葉君。大学入学時から努力していたのは守備でした。

 「守備から攻撃というチームなので、それだけは絶対に負けちゃダメだと思ってやってきました」(千葉君)

 昨年は、同じセンターのポジションだった山崎晃太朗君(今年、日大からドラフト5位でヤクルト入団)と一緒に練習。積極的に守備のポイントを聞きました。

 「いろいろ教えていただいたんですが、その1つが一歩目のスタートのポイント。僕が、守備の時はどこを見ているのかを質問したら、“打者のバットやボールではなく、視野を広くもって全体を見る”と教えてくださったんです。練習で挑戦してみたら、打球に対する一歩目のスタートが切りやすくなりました。山崎さんからは、いろいろ学ぶことが多かったです」

 先輩直伝の守備。これを武器にこの春のオープン戦からアピールし、メンバー入りを手にしました。

 ランナーが出たら送り、チャンスの場面ではしっかりスイングして打ち返す。粘り強く出塁するのも、高校時代のまま。

 「特に大きい打球は打てないので、内野の間を抜ける、逆方向への強い打球を目指してやっています!」

 そうそう! 今日の1本も、左方向に強い打球! 練習の成果が出たね!

 「千葉は試合に出ると相手が嫌がってくれますからね。それに、守備がいいですから安心して使えますよね。彼が試合に出ると、ベンチに活気が出るんです。小さい体ですが、もうひと回り大きく成長して欲しい。期待していますよ」と中村監督も評価しました。

 千葉君の野球の原点は、花巻東高校時代。

 「野球は身長じゃない。小さくてもできることがあるよ」という佐々木洋監督の言葉でした。常に考え、工夫して練習。入学当初のフルスイングのフォームを封印し、逆方向に強いゴロを打つという意識へ。

 「フライアウトはダメ。常にゴロかライナーを打つ。そのために、ティーバッティングではただ打つのではなく、ミートポイントを意識して練習する。カット打法を練習したことで、バットコントロールも身につきました」(千葉君)

 逆方向を狙うことでボールを最後まで長く見られ、変化球の空振りも少なくなりました。

 大学に入ってから、なかなかメンバーに入れず、ボールボーイまでしていた千葉君が、決してあきらめずに、自ら先輩の山崎君に教えを請いながら成長。

 「守備と状況に応じたバッティングで、これからも試合に出られるように頑張ります!」(千葉君)

 コンプレックスを最大の武器に変え、体は小さくても誰よりも大きな存在感を見せてくれる千葉君。大学野球でも、何かをやってくれる。そんな期待でいっぱいになりました。