第87回選抜高校野球大会(21日から12日間、甲子園)に出場する県岐阜商の152キロ右腕・高橋純平投手(3年)がクレバーな一面を見せた。自らが出席した抽選会から一夜明けた14日、岐阜市の長良川球場で行われた天竜(静岡)との練習試合に先発。球速は平均140キロほどに抑え、制球を重視した「大人」の投球。決め球フォークを封印するも3回で7奪三振をマークした。24日の初戦で松商学園(長野)と対戦する。

 最速は145キロ止まりで平均球速は140キロ。直球26球のうち10球が130キロ台だったが、意図的に球速を抑えていた。

 「この2日間練習していなかったので肩が軽かった。軽くて最初は浮いたけど、全体的には低めに抑えられました。今日はいろいろと試したいことがあった。ここまでの段階としては良かったです」

 前日、大阪での組み合わせ抽選会を終え、夜に岐阜に戻ったばかり。体調も考慮してエンジン出力をあえて抑えた。そんな状況でもそれなりの投球ができる。奪った7三振のうち4つが見逃し。制球を重視し、内外角を丁寧に突いた。スライダーの曲がり幅を確認した。走者がいなくてもクイックを試した。

 プロ3球団のスカウトが視察したが、ヤクルト羅本スカウトを「ダルビッシュのような投球術ができる投手」とうならせた。前週の対外試合解禁日に152キロを出した剛球が注目されるが、クレバーさこそが真骨頂。反省と課題を客観的にとらえる能力があり、小川信和監督(43)は「もっと精度が高まれば甲子園でも面白い試合ができる」と手応えを感じている。

 完成度の高い決め球のスプリットも封印した。「スライダーとカーブをとらえられたら、投げさせます」と捕手の加藤。剛速球、スプリットと余力を残しての投球で手玉に取った。

 調整は問題ない。本番10日前でも3回しか投げなかったが、試合形式のチーム練習で「主戦」を務めている。大阪入り後も、試合の合間に同様の調整を行う予定。打者陣にとっては最高の対戦相手になり、チーム力の底上げにも貢献しているのだ。初戦で松商学園と対戦する。「2点あれば大丈夫。100球くらいで勝ちたい」と前日に言い放ったのもうなずける、余裕のマウンドさばきだった。【柏原誠】