昨秋近畿王者の天理(奈良)が、初出場の糸満(沖縄)から12安打7点を奪い圧勝した。2点リードの7回にはプロ注目の4番坂口漠弥(ひろや)内野手(3年)が、左中間に高校通算29本目となる中押し2点本塁打を放ち、鮮烈な聖地デビューを果たした。高崎健康福祉大高崎(群馬)も宇部鴻城(山口)に大勝。両チームがぶつかる2回戦は、12年1回戦以来の対決となる。

 打った瞬間それと分かった。7回2死三塁の第4打席。天理・坂口は1ボールからの2球目に投じられた外角低めの直球に反応した。「思いっきり振り抜いた」打球はライナーで左中間スタンドに着弾。新怪物誕生の瞬間だった。

 「最初は変化球を狙ってましたが、4打席目から直球(狙い)に切り替えました」。公式戦11本目、高校通算29本目となるアーチに「今日は勝てたので『あの時』とは(本塁打の)価値が違います」。そう振り返ったのは昨夏、智弁学園と戦った奈良大会決勝。甲子園出場にあと1歩で手が届く、そんな一戦で立ちはだかったのは後に巨人ドラフト1位で入団する「怪物」岡本だった。坂口の目の前で岡本はチームを勝利に導く場外本塁打を放った。「やっぱり岡本さんはすごいと思いました」。自身も本塁打を打ったが、チームを聖地に導けず力の無さを痛感した。

 敗北を機に、より熱心に練習に励むようになった。そんな坂口を支えたのは、昨年2月に就任した元近鉄の中村良二コーチ(46)だった。「崩されても下半身で粘ればいい」とアドバイスを受け、冬場は下半身強化に取り組んだ。高校通算41本塁打を放った中村コーチも「彼は(今大会で)あと3、4本打ってもおかしくない力を持っている。大舞台で自信をつけてくれたら」と期待を込めた。

 甲子園デビュー戦で見せたあいさつ代わりの1発。しかし怪物は満足しない。「岡本さんも中村さんも(甲子園で)2本打った。超えられたらいいなと思います」。主役の座は譲らない。【梶本長之】