ラグビーのトップリーグ、ヤマハ発動機の清宮克幸監督(47)の長男で、早実の「和製ベーブ・ルース」清宮幸太郎内野手(1年)が、高校第1号となる推定130メートル特大3ランを放った。5回、1-5から2点を返した1死二、三塁。直球を狙い打ちし、神宮第2球場のネット中段に運んだ。2安打4打点を挙げたが11-18で敗退。「80本ぐらい打ちたい」と、石川・星稜時に通算60本塁打を放った憧れの元ヤンキース松井秀喜氏(40)超えを宣言した。

 高く上げた31センチの右足を下ろした瞬間だった。清宮の放った打球が、低い弾道で中堅方向へ伸びた。関東第一・オコエ中堅手はほとんど1歩も動かず、空を見上げた。白球の勢いはまったく衰えないまま、ネット中段に突き刺さった。両翼92メートルだが、ライナー性の打球は優に130メートルは飛んだ。

 入学後3試合、13打席目に規格外の1発が飛び出た。「真っすぐを張っていました。気持ち良かった。記念すべき日だなと思います」。前2試合でも適時打含む4安打を放ったが「本塁打以外は納得いかないです」と、ぎこちない笑顔を見せていた。手をたたきながらダイヤモンドを回る姿は、心からの喜びにあふれていた。

 飛距離と同様、打席を待つ姿も“規格外”だった。本塁打は5回一打同点の場面だったが、ネクストバッターズサークルでは「紺碧(こんぺき)の空」に合わせてリズムをとった。「(早実)初等部から聞いていてあの応援歌が好きなんです。力に代えます」。どんな場面でも自分のスタイルを貫くのが「清宮流」だ。

 父に対する恩返しの1発でもあった。「子どものころから『準備が大事』だと言われてきました」。試合前、自宅の地下室で腹筋などのトレーニングをした後、父が在宅時は必ずティーを上げてくれる。「いつもサポートしてくれて。ホームランはそのたまものだと思います」。二人三脚で伝説を紡いでいく。

 星稜時代に通算60本塁打を放ち、ヤンキースなどでプレーした大好きな松井秀喜氏に1歩近づけた。手首の使い方などを、中学時代から手本にした。それでも、目指すところはもっと上。高校通算本塁打数についての質問には「明確にはないですが目標は高い方がいい。80本ぐらいは打ちたいです」。憧れを超えるための最初の1本をこの日、打った。

 「清宮フィーバー」は過熱し、この日は報道陣約50人が集結した。「上等というか、それはつきものだと思います」と意に介さないどころか、周囲の期待をパワーにする。試合後、ホームランボールは手元になかった。「もらえたらうれしいですが、もらっても練習球になっちゃうんで」。規格外のスラッガーは、ちっちゃいことなんて気にしなかった。【和田美保】