高校球界きっての名将から太鼓判だ。第88回選抜高校野球(甲子園)に出場する札幌第一のエース上出拓真(3年)が15日、和歌山市紀三井寺球場で行われた智弁和歌山(和歌山)との練習試合で先発し、5回を投げて毎回の10奪三振。散発3安打1失点(自責0)の快投に、甲子園最多勝利監督の智弁和歌山・高嶋仁監督(69)も「スライダーに当たらへん」と脱帽だ。チームは過去2度、夏の甲子園で敗退していた因縁の相手に5-1で雪辱し、本番へ弾みをつけた。

 「なかなか、ええチームやな」。監督として甲子園通算63勝を誇る名将が、思わずうなった。智弁和歌山・高嶋監督の目に留まったのは、今年初めて先発した札幌第一のエース上出だ。立ち上がりの1回こそ、味方の失策絡みで先制点を許したが、5回まで毎回の10奪三振と圧倒的投球に、敵将は「追い込まれたらスライダーが来る。そういう練習を昨日、して来たけど(バットに)当たらへん。久々に甲子園で見るような、キレのある球を見た」と舌を巻いた。

 普段は寡黙でおとなしい右腕も、昨夏の甲子園メンバー2人が出場した強豪を抑え込み、さすがに気分が高揚した。「久しぶりの先発で、気持ちが違った」と顔を紅潮させた。3回には4番打者相手に、自己最速に並ぶ138キロをマーク。とりわけ、高嶋監督が絶賛したスライダーには手応え十分。今月上旬の宮崎合宿に同行した元横浜部長の小倉清一郎氏(71)の助言で投球フォームを修正するうちに「球が変わってきた。今は変化球で空振りも、ストライクも取れる感覚」と自信を深めている。

 チームは過去3度、夏の甲子園に出場し、2度、智弁和歌山に敗れた。昨秋の明治神宮大会で高嶋監督に遭遇した札幌第一・菊池雄人監督(43)が練習試合を申し込み、この日、実現。上出は「監督がベンチで『甲子園で2回負けているから、練習試合でもオレは勝ちたい』と言っていたので、勝てて良かった」と笑顔だ。

 高嶋監督は予言する。「スコアは1-0、2-0。こんなもんでしょ。センバツは投手がいいチームが勝つ。1回戦は、どのチームも鬼門。乗り切れば、3つくらい行くんちゃうか」。本番前のリベンジマッチを制し、初陣の春へ大きな自信を手にした。【中島宙恵】

 ◆札幌第一対智弁和歌山 夏の甲子園で2度対戦し、ともに敗戦。初出場だった02年1回戦では、8回表まで0-4の劣勢も、8回裏に1点を返し、9回には5長短打を浴びせ同点に追い付く粘りを発揮。延長10回に決勝点を奪われ、4-5で惜敗した。再戦となった09年は2回戦で激突。相手左腕の岡田俊哉(現中日)を序盤に攻め、5-4とリードで迎えた9回表に一挙4失点。5-8と痛恨の逆転負けを喫した。