「松坂マニア」の最速150キロ右腕、創志学園(岡山)高田萌生投手(3年)が、甲子園デビューを1失点完投で飾った。5-1で東海大甲府(山梨)に快勝。今秋ドラフト候補が、11年春以来2度目の出場となったチームを甲子園初勝利に導いた。海星(長崎)は、21世紀枠の長田(兵庫)に競り勝ちセンバツ初Vとなった。

 尻上がりに調子を上げた右腕のハイライトは9回だった。高田は、外角真っすぐで先頭打者から見逃し三振を奪った。バックスクリーンに146キロと表示された1球は、バックネット裏の巨人スカウトのスピードガンで今大会最速となる149キロを計測していた。

 「まずは1勝を目標にしてきた。達成感はある」

 課題の立ち上がりは緊張もあり、力みが見られた。変化球主体の投球で2回は1失点で切り抜けるも、3回は守備で送球ミス、5回はバント失敗(捕邪飛)。味方が逆転した5回表のキャッチボール中、長沢宏行監督(62)からげきが飛んだ。「しっかり野球をしろ」。打線の援護と、監督のひと言で目を覚ました。

 スイッチが入ったように、そこからは真っすぐで押した。「しっかり腕を振れた。球場に慣れたところもある」。投球のテンポが上がり、5回までの毎回安打から6回以降は1安打投球。「(創部)初めての1勝を自分たちでつかみ取り、創志学園の歴史をつくりたかった」。昨夏の岡山大会では甲子園まであと1歩に迫りながら、決勝で涙をのんだ。昨秋の神宮大会では敦賀気比に苦杯をなめた。大舞台で勝てる投手を目指してきた。

 野球を始めたときから松坂(ソフトバンク)に憧れた。投球映像を繰り返し何度も見た。「(自分と)重ねてイメージトレーニングしている」。ワインドアップから始動するフォームをまね、今大会中も生まれる数カ月前の98年選抜の映像に見入ったほどの“松坂マニア”だ。

 「そこまでハイレベルな投球ができていない。150キロは出したいけど、勝てる投手になりたい。今日は甘さが出たので、次回までに修正したい」

 甲子園の勝利で、憧れの松坂に1歩近づいたと言っていい。ここから新たな歴史を刻んでいく。【前原淳】

 ◆高田萌生(たかた・ほうせい)1998年(平10)7月4日生まれ。岡山県新見市出身。小学3年からソフトボールを始め、高知・明徳義塾中で野球部に所属。創志学園では1年夏からベンチ入り。昨夏は主戦として県準優勝。最速は150キロ。球種は縦と横2種類のスライダー、カーブ、ツーシーム、チェンジアップ。178センチ、75キロ。右投げ右打ち。