21世紀枠で出場した中村(高知)は、初戦で敗れたが40年ぶりの甲子園でいくつもの苦境を乗り越え奮闘し、アルプススタンドから大拍手を受けた。

 甲子園練習を終えた後、15日から4選手がインフルエンザによる体調不良を訴えた。中野聖大捕手(3年)、武田晴仁一塁手(3年)、泥谷和希投手(3年)、岡村奎翔内野手(3年)が宿舎では隔離状態だった時期もあり、19日の開会式は欠席していた。この日はようやく全16選手がベンチ入りした。

 災いを、自分たちの取り組み方で福に変えていた。

 中野は体を動かせない分、宿舎で相手データを徹底的に頭にたたきこんでいたという。エースの北原野空投手(3年)は「中野が熱心に分析していることを周りから聞かされ、頼もしかった」と喜んでいた。昨秋の県決勝で明徳義塾に完封勝ちして高知1位となった右腕の考えは「投手はポジティブにイケイケで試合に臨む。捕手はさまざまな問題が起こったときに備えるネガティブな部分も必要」というものだ。中野がインフルエンザによる苦境をはねのけ、初戦の準備に時間を費やしていたことで、北原は意を強くしてマウンドへ上がった。

 2回に2点、6回に3点を奪われた。結果は重い失点だったが、北原は甲子園での投球に「スプリットをうまく使えました。去年の秋までにはなかったドロップも7回から投げて有効でした。チェンジアップも、ツーシームも」と多くの収穫を感じ取った。

 40年前は12人で準優勝し「二十四の瞳」と喝采を浴びた。今年のチームは、今度は夏に勝利を目指す。4月になれば、中村高校を受験した合格者と、中高一貫の中学から入学してくる生徒の中に、10人には満たないが野球部新入部員が誕生するという。

 20人超えにはなりそうな新しいチームが、今後もいくつものハードルを乗り越えていく。【宇佐見英治】