前橋育英(群馬)が「140キロ超えトリオ」の活躍でセンバツ初勝利を挙げた。先発の丸山和郁投手(3年)が、最速を更新する力投で5回0/3を3安打6三振無失点に抑えた。右腕2人も好救援を見せ、21世紀枠で40年ぶりに出場した中村(高知)を5-1で下した。群馬勢は春夏通算100勝。

 緊張で押しつぶされそうになりながら、丸山がマウンドに上がった。「足がガクガクで。1回が終わって少し楽になりました」。初回、先頭に死球を与えたが後続を3者連続三振に切った。2度目の甲子園だが「背番号1」は初めて。中村の大応援団に負けないよう気持ちを押し出した。2回には最速を1キロ更新する144キロを記録。「ちらっと(電光掲示板を)見ちゃった」と余裕も出てきた。

 5回途中で足をつりかけたが、この回を投げきり無失点でつないだ。負けられない理由があった。先発の柱だった吉沢悠投手(3年)がケガで離脱。泣いていた姿を見た。試合当日の朝、グループLINE(ライン)に「絶対勝てよ」とあった。昨年11月には大好きだった祖母セイさん(享年93)が他界。亡くなる前1週間は毎日病院へ通った。この日は写真をカバンに忍ばせた。「良かったです」と一言に喜びを凝縮させた。

 中堅で先発した皆川は5回に大飛球をジャンピングキャッチ。投げては6回途中から、2回を無失点に抑え最速141キロを出した。「秋は使っていないカーブを使えたのが良かった」とフル回転した。192センチ右腕の根岸は最速を3キロ更新する141キロを出し大台に乗せた。1点を失い「ベストを更新できて良かったですが、次こそゼロに抑えたい」と拳を握った。

 荒井直樹監督(52)はこの日の朝、高橋光成を擁して優勝した13年夏の決勝(延岡学園)のビデオを見せた。「普段はほとんど見せないのですが。気持ちを高めてほしかった」。力を集結させ、偉大な先輩に1歩ずつ近づく。【和田美保】

 ◆1番・投手 前橋育英は先発丸山が1番打者。センバツの1番・投手は13年下石涼太(広陵)以来で12人目。過去は89年大越基(仙台育英)98年東出輝裕(敦賀気比)08年今宮健太(明豊)らが記録。勝利投手になったのは東出以来。