早実・清宮幸太郎内野手(3年)が内野手5人、外野手2人の岩倉版「清宮シフト」を敷かれた。厳しいコースを突かれたが2安打を放ち、9-4で逆転勝ちした。16強入りし、夏の西東京大会のシード権を獲得した。

 早実・清宮の目に、異様な光景が映った。1回、打席に向かうと、岩倉の中堅・森本が二塁ベース付近にダッシュ。引っ張り警戒で全内野手が、時計回りでポジションを右に移すのが見えた。遊撃手と二塁手の間で森本が腰を落とした。内野5人、外野は右中間と左中間の2人で構成する「清宮シフト」だった。試合後、報道陣から「意識したか?」と聞かれ、打撃不調で硬かった表情が崩れた。

 清宮 いやいや…。まぁ、面白かったですけど。

 打球が飛んだ位置を見れば、「清宮シフト」の影響はなかった。全5打席ともにシフトを敷かれたが、仮に定位置でも打球処理は可能な場所だった。清宮自身も戸惑いはなく、「気にしなかったです。(試合前の)シートノックから5人いたんで、自分の時はそうなるのかなと思った」とサラリ。唯一、気になったのは「センター前に抜けたら、どうするのかな」だった。

 岩倉・豊田浩之監督は「清宮君の打球はきれいに上がる。(外野2人でも)追いかければ、最後に追いつけるかなと。内野の間は防ごうと思った」と説明。厳しいコースを攻められながらも、2安打をマークした。視察した西武鈴木葉留彦球団本部長は「昔(全野手がポジションを右寄りに変える)王さんシフトというのがあったけどね。これもすごいね。ビックリした」と目を丸くした。

 これでチームはベスト16に進出した。本調子にはまだ遠く、あと1本に迫る高校通算80号は次戦に持ち越された。和泉監督は「練習では問題ない。センバツから気持ちが張り詰めているから、精神的な問題だと思う」とフォローした。清宮も「自分が打てない分、下級生が頑張ってくれた」と後輩の活躍をたたえつつ、次戦での自身の活躍を強く誓った。【久保賢吾】

 ◆高校野球の主なシフト 最近の甲子園では13年夏、済美が「カット打法」で注目された花巻東・千葉を封じるため中堅手をマウンドの三塁寄りに配置。それでも3安打を許した。63年夏の横浜は高田商戦で左翼手をベンチに下げ、内野手を投入し、内野5人作戦は「カニばさみ」と呼ばれた。73年夏の柳川商は江川を擁した作新学院戦で走者三塁の3度のピンチに中堅手をマウンド付近に置き、すべて無得点に抑えた。95年夏の観音寺中央は日大藤沢戦で、中堅手を三塁前に置くスクイズ封じを試みた。