<君の夏は。>

 横浜緑ケ丘(神奈川)の2回1死二塁のチャンスだった。平岡祐紀(3年)の中前打で、三塁コーチスボックスの重田和樹(3年)はちゅうちょなく右腕を回した。「際どいタイミングでしたが、いけると思いました」。好判断で先制点を呼び込むと、笑顔でガッツポーズした。

 外野手登録の背番号「10」でベンチ入りしたが、実はマネジャー。打席に立つことも、守備につくこともない。それでも「自分の判断1つで試合が決まる。責任重大ですよ」と三塁コーチに胸を張る。

 小学5年で野球を始めたが、中学時代は卓球部だった。高校で野球に再挑戦したが、1年冬に限界を感じた。「体力的にもきつくて…。監督にやめたいと言いました」。そんな重田を仲間が引き留めた。

 2週間をかけて真剣に考えた。「少しでも貢献できるなら」と、マネジャーとしてチームに残る決意をした。「あの時、仲間に『やめないでくれ』と言ってもらえて良かったです。感謝しています」。

 飲み物の準備など雑用だけではなく、ノッカーも役目。この日も試合前のシートノックを務め、裏方としての仕事に誇りを持っている。7-3で勝利し、2回戦に進出。「どんな形であれ、全員で笑って終われたら良いと思います」と前を向いた。【太田皐介】