東大合格者数で全国一を誇る開成(東東京)の5番宮本航三塁手(3年)が、足立西戦で2打席連続本塁打をマークした。1回に3ラン、3回にはソロをともに左翼に放った。サヨナラ負けを喫し、5年ぶり夏勝利が目前で消えたが、同校を率いて19年の青木秀憲監督(46)が「ウチにはないです」と仰天の2連発だった。

 本塁打は練習試合の4本だけだった。そんな宮本が最後の夏、豪快に2本、2打席連続でかっ飛ばした。1回2死二、三塁。ここで1号が飛びだした。「練習試合の打率(3割7分)がよかったんで、自分の打撃をしようと思いました。真ん中のスライダーです」。2本目は3回2死から。「ゲッツーのあとで、流れを変えようと思った。内のまっすぐ。ボク、どのコースもバットが出るんです」。

 開成中ではテニス部に所属した。ラケットを握った経験から、どのコースも対応できるという。「ふつう(打者は)打撃フォームを固めようと、振り込むでしょう。ボクは固定しないんで」。174センチ、68キロ。スラッとした体形にパワーは感じない。「筋トレはやらないです。原理を考えて、スイングした円運動がベース上に来たときに、スピードをあげることで飛ぶと思うんです」と話した。

 同点の9回、無死一、二塁のピンチでは、宮本が救援したが、サヨナラ打を許した。5年ぶりの夏勝利が目前で消えた。ナインが号泣する中、宮本は終始冷静だった。サヨナラ打された1球にも納得していた。9回無死満塁となって、バックは右翼を内野に置く「5人内野」のシフトを敷いた。打球は2人しかいない外野手の真ん中に落ちた。「外野を越える球は打たせない。それはできましたから」。

 50メートル6秒3。運動能力は高い。東大野球部から声がかかるかもしれない。「敷居が高いです。東大志望でもないし。86センチのジャンプ力があるんで、陸上(走り高跳び)もいいかなと。通用するものを伸ばしたい。埋もれたくない。ボク、輝きたい人なんで」。最後の夏を終えた宮本は、卒業後の自分に目を向けた。【米谷輝昭】