第90回記念選抜高校野球大会(3月23日開幕、甲子園)に6年ぶり3度目出場の花巻東(岩手)の菅原颯太主将(2年)が、捕手から三塁手へのコンバートに成功した。昨秋の右腰疲労骨折を乗り越え、新ポジションでレギュラーを奪取。13日、兵庫県内で行われた全国優勝経験のある育英(兵庫)との練習試合でも、守備では無失策、打撃では2戦合計5打数3安打2打点と存在感を示した。チームは5日からの関西合宿を打ち上げ、岩手に戻った。

 菅原の1プレーが、チームのボルテージを一気に上げた。4-1で迎えた第1試合の4回裏無死一塁。相手4番の強烈な三遊間のゴロ。やや腰高だったが、左手を懸命に伸ばす。グラブに収めると、二塁に送球してアウトにした。仲間からは拍手と歓声。「下手は下手なりに、必死でやっています。捕手は頭を使うけれど、三塁手は足を使うことを考えて」。三塁手は中1以来の経験。第2試合で強襲安打を許し「もっと前に出ないと。泥臭く体で止めないと」と、自身にダメ出しする姿は向上心に満ちていた。

 昨秋の東北大会中に、佐々木洋監督(42)から転向を告げられた。「打撃を評価していただいてのこと。うれしかった」。右腰を骨折し、公式戦はわずか4打席だけ。復活を期す命綱だった。内野手グラブは父の友人から急きょ譲り受けた。朝6時から約2時間、守備の要でもある谷直哉遊撃手(2年)と毎日、特訓を継続。気温0度を下回る日も白い息を吐きながら、室内練習場で白球を左手でつかみ続けた。「みんな不安だと思いますが、声出しから引っ張っていくのが自分の強み」。投手にも一番近い位置から、仲間を支えるつもりだ。

 7番で先発した攻撃でも、2点適時二塁打などで先頭をきった。練習試合解禁となった8日以降、近大付(大阪)、天理(奈良)、東洋大姫路(兵庫)の甲子園覇者などと対戦し、7勝1分け2敗の好結果。「チームも手応えを得ていますし、自分も3割以上は打てています」。16日には、いよいよ対戦相手も決定する。「花巻東の元気、全力疾走、粘り強さで『岩手から日本一』を目指します」。菊池雄星(西武)、大谷翔平(エンゼルス)もなし得なかった甲子園の頂点を導く。【鎌田直秀】