打ち損じなしのサイクル安打で「工業校対決」を制した。鶴岡工の5番遠藤正裕捕手(3年)が、7回の第4打席までにサイクル安打を達成。4安打4打点の固め打ちで、寒河江工を10-6で下す原動力になった。2点差に迫られた7回裏には、公式戦初アーチとなるダメ押し2ラン。自らも大記録を飾った。復帰マスクとなった捕手でも3投手の継投をリードし、攻守でチームを鼓舞した。

 快音が止まらない遠藤のバットが、追い上げムードに沸く寒河江工の全校応援を黙らせた。最大6点リードから7-5まで追い上げられた直後の7回裏2死一塁、左越えに高校初の柵越えとなる2ラン。最初の4打席だけでサイクル安打を成し遂げた。試合後、地元テレビのインタビュー中に快挙達成を知って一瞬驚き、「1打席1打席に集中していたので知りませんでした。素晴らしい結果を出せてうれしい。今後の人生の自信になります」と上気した顔で話した。

 初回の1打席目は中前打、3回の2打席目は右中間への適時二塁打、5回の3打席目は右中間への適時三塁打。単打、二塁打、三塁打と打席を重ねるたびに内容も上がり、本塁打であっさり快挙達成だ。7回は、続く6番太田琳久内野手(3年)の2者連続アーチも誘発した。1打席も打ち損じはなく、4安打4打点の大当たり。すべて外角寄りの高めの直球をセンター方向中心にはじき返した。「練習試合でランニング本塁打はありますが、(スタンドに)打ったのは初めて。しっかりと捉えられた」と自身初アーチを振り返った。

 背番号は7。昨夏まで控え捕手だったが、打撃を期待されて昨秋、外野手でレギュラー入りした。だが、大会2週間前の練習試合で正捕手の阿部秀梧(2年)が左手を負傷。急きょ捕手に復帰した。エース右腕・佐藤泰成(3年)とは鶴岡二中時代もバッテリーを組んでいた。だが、急な「復縁」に大会前は打撃も低迷。素振りを含めて1日約300本の打撃練習で復調した。守備でも「プレッシャーはありましたが、後ろにそらさずに前で止めることだけを考えた」と、佐藤泰を含む3投手のリードにつなげた。

 2回戦では、今春のセンバツに出場した第6シード日大山形と対戦する。春の県大会2回戦で3-13の6回コールドで敗れた相手だ。無安打の悔しさを味わった遠藤は「1人1人の仕事をしっかりとして、チーム一丸になって向かっていきたい」と司令塔の心意気を示した。【佐々木雄高】

 ◆遠藤正裕(えんどう・まさひろ)2000年(平12)8月27日、山形・鶴岡市生まれ。朝暘五小3年から大宝寺スターファイブで野球を始める。鶴岡二中では軟式野球部。鶴岡工では2年夏に控え捕手でベンチ入り。同秋から外野手でレギュラー。177センチ、73キロ。右投げ左打ち。家族は祖母、両親、姉2人。

 ▼プロ野球のサイクル安打は、9日の巨人戦で達成したヤクルト山田哲を含め66人、71度ある。うち「単打→二塁打→三塁打→本塁打」の順で達成されたのは5度だけで、かつ4打席までにその順で達成されたのは、1950年(昭25)5月25日広島戦での阪神藤村富美男しかいない。