有馬がコールドで敗れ、4回戦進出はならなかった。

 劣勢の展開にも、三塁側ベンチでは前田千紘マネジャー(2年)が声を張り続けた。スコアブックに記入しながら、最前列で150センチの身体を懸命に伸ばし「ナイスボール!」「気持ち大きく!」「がんばれー!」と守るナインを鼓舞した。「3年生と一緒にできるのも夏まで。最後まで一緒に戦いたかった」と涙した。

 中学までバレーボール部に所属。声の大きさは「よく言われます」という。この日も甲高い声が球場中に響き続けた。一塁側、厚木の応援団の中にいても、前田マネジャーの声がはっきりと聞こえたほど。「試合に夢中で、何を言っていたか覚えていないんです」。炎天下の、一方的になりかけた試合。前田マネジャーの魂のシャウトが、球場全体を引き締めていた。

 試合終了の瞬間、口を結び、左手で涙をぬぐった。応援団への御礼では、選手よりも深く、頭を下げた。「いつも3年生の先輩に迷惑をかけてばかりいたから」とまた涙をこぼしたが、石井晴貴主将(3年)は「自分たち3年生にマネジャーがいない中で、2年生なのに盛り上げてくれて、本当にありがたかった」と感謝した。

 選手16人、マネジャー5人の有馬は、3年生の引退で選手11人、マネジャー5人になる。「今年学んだことを生かし、また1、2年生を支えていきたいです」。あこがれだった高校野球のマネジャー生活もあと1年、野球部を支え、時にはその熱さで引っ張る。【金子真仁】