6年の時を経て、桐光学園(北神奈川)に「2人の松井裕樹」が再来した。胸を反り、真っ向から速球を投げ下ろす左腕天野陸投手(2年)が、伊志田打線を寄せつけず5回1安打無失点。球速130キロ前後ながら、球威十分だった。七夕祭りが終わったばかりの平塚で「いつもより球が走っていた。テンポ良く投げられた」と胸を張った。

 天野を救援した左腕冨田冬馬投手(2年)は、OBの楽天松井そっくりのフォームとキレ味鋭いスライダーから「松井2世」と呼ばれてきたが、天野も「もう1人の松井2世」にふさわしい力投だった。公式戦初先発ながら「自分のピッチングができました」と堂々たる投球だった。

 6年前、松井の伝説も平塚から始まった。当時はまだ全国では無名の2年生左腕が、初戦の厚木北戦で17奪三振の完封劇。この日の天野と同じように「自分のピッチングができた」と総括した。そのまま神奈川を制し、甲子園では1試合22奪三振の大会記録。「あこがれました」と天野。冨田も含め、偉大な先輩にあこがれて桐光の門をたたく選手が増えている。

 その伝説の年以来の甲子園を目指す。天野、冨田ではなく、2年生右腕の谷村然(2年)が背番号1をつける。野呂雅之監督(57)も「1人の投手が投げ抜くのは厳しい暑さ。谷村、冨田の負担を減らすためにも、天野の好投は大きい」とたたえた。この日場外弾の1年生西川に、プロ注目の主砲森下…。ライバル東海大相模が「打」なら、桐光学園は「投」。松井裕樹のDNAで聖地へ突き進む。【金子真仁】

 ◆天野陸(あまの・りく)2001年(平13)6月21日、千葉・浦安市生まれ。小学生時代には「NPB12球団ジュニアトーナメント」の巨人ジュニアに選出され、札幌ドームで特設フェンス越えの本塁打を放った。中学時代は東京城南ボーイズでプレー。左投げ左打ち。174センチ、81キロ。