金足農(秋田)のプロ注目右腕、吉田輝星投手(3年)が、全国デビュー戦となった第100回全国高校野球選手権大会の鹿児島実戦で、14奪三振で完投した。14三振中、10三振は伸びのある高めの直球で奪った。

 球速だけじゃない。吉田はクレバーに23年ぶりの初戦突破へ導いた。走者を出すまで140キロ前後の直球を投げ、走者を許すと一気に球速を上げる「ギアチェンジ投法」を披露した。「3段階ぐらいある。体の使い方を大きくして、前で離す。たたきつけるイメージ」。5回1死二塁では1番山下馨にギアを「3」まで上げた。この日最速、内角への148キロ直球で見逃し三振を奪った。

 5回こそ左打者への内角直球で乗り切ったが、この日の投球を支えたのは外角直球。左肩が開き気味で左の内角の制球が利かないと判断すると、積極的に外の直球を織り交ぜる高い修正力を発揮。「肩が開かないように外を多めに投げた。追い込んでからはいいリズムで投げられた」。プロのスカウトの計測では自己最速に1キロと迫る149キロの球もあったが、自己採点は「30点」と辛口だった。

 スタンドで見守った祖父理正(りしょう)さん(70)、父正樹さん(42)はともに同校OB。吉田は「まず1勝できて恩返しできた。次は0点に抑えたい」。硬軟自在の投球で、新しい歴史を作り出す。【高橋洋平】