大阪桐蔭(北大阪)の背番号1が、100回大会最速に躍り出た。柿木蓮投手が、先発根尾昂内野手(ともに3年)の後を受けて9回に2番手で登板。今大会最速の151キロをマークし、無失点で試合を締めた。二刀流の根尾に対するエースの意地を、甲子園のマウンドで爆発させた。

 柿木の外角低めの直球が、フルスイングのバットと交差した。1ボールからの2球目、スタンドからはどよめきが起こった。スコアボードに151キロの表示が刻まれた。

 9回に抑えで登板したエースが、100回大会最速となる151キロをマークした。「ベンチを出るときに、皆から『行け、行け(150キロ)出してこい』と言われて、意識しないようにしたけど、意識した。観客が沸いてうれしかった」。これまでの今大会最速は、星稜・奥川が開幕戦で出した150キロ。大舞台で自己最速も3キロ更新し、満面の笑みで喜びを表現した。

 この日、先発は根尾に譲った。「根尾があんまりよくなかったので、早くから投げて、流れを変えたい思いだった」と、6回頃からベンチ前でキャッチボールを始めた。負けず嫌いのエースによる、西谷監督へ猛アピールだった。いざマウンドへ。「勢いに任せた。打てるもんなら打ってみい、という感じで投げました」と気迫を見せた。

 昨夏の甲子園は、3回戦の仙台育英戦のサヨナラ負けで春夏連覇を逃した。そのマウンドに立っていたのは柿木だった。試合後、当時3年のエース徳山壮磨投手から「横川、根尾、柿木の3人が軸になって俺を超えろ」と託された。また、その3人の中で唯一柿木だけに、代々受け継がれる歴代エースの帽子、野球ノート、必勝しゃもじの入った袋が託された。しかし、今春センバツの優勝マウンドにいたのは二刀流の根尾だった。「自分は投手だけだから負けたくない」と悔しさを抱えて、夏に臨んだ。

 大阪桐蔭では辻内崇伸(元巨人)藤浪晋太郎(阪神)が甲子園で150キロ超えを記録。偉大な先輩に続いたが「例えば160キロの球でも打たれたら意味がない。勝てる投球をしないと」と、常勝軍団のエースとして気を引き締めた。「西谷先生から『夏は思うようにいかない』と言い聞かされ、実際にそれを感じてきた。でも、(北大阪大会の履正社戦で9回2死無走者から)逆転したことも夏だからこそ。成長につながっている」。熱い夏を制すため、エースの輝きは、まだまだ増していく。【鶴屋健太】

 ◆柿木蓮(かきぎ・れん)2000年(平12)6月25日生まれ、佐賀・多久市出身。野球は多久北部小1年から始め、多久市立中央中では佐賀東松ボーイズに所属。大阪桐蔭では2年春のセンバツで甲子園デビュー。同夏の甲子園は3回戦で仙台育英にサヨナラ負けしたが、今春のセンバツはエースとして優勝に貢献。最速151キロ。184センチ、83キロ。右投げ右打ち。