「プロ野球ドラフト会議 supported by リポビタンD」が25日、都内のホテルで行われる。日刊スポーツでは「10・25ドラフト会議 みちのく野球人 運命の日」と題して、注目選手を3回に分けて特集する。第1回は高校生編。昨夏の甲子園に出場し、今夏の秋田大会で準優勝した明桜(秋田)山口航輝投手(3年)は持ち前の長打力を生かして、野手一本で勝負する。

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秋田の名勝負をプロでも実現させる。山口は金足農・吉田輝星と2年連続の秋田大会決勝で激戦を繰り広げた。去年は山口が勝ち、今年は山口が負けた。「自分の小さな頃からの夢がプロ野球選手。もしプロに入れたら、吉田と対戦できるように頑張っていきたい。今度の対戦では絶対に勝ちたい」。高校通算25本塁打の長打力を生かして外野手に専念し、プロ入りに挑戦する。

100年後まで語り継がれる1シーンがある。決勝戦、0-2の9回表先頭。吉田とこの日4度目の対戦となった山口は2球目をレフトへ特大ファウル。切れる打球を見届けた山口がほほ笑むと、マウンド上の吉田も呼応するように少し笑った。そこには2人にしか分からない世界があった。

山口 これが最後になるのは分かっていた。楽しもうと思って打席に入った。こっちが笑うと吉田も笑っていた。自分の持っているものをすべて出し切れた。

楽しい時間にも、終わりが来る。カウント1-2の5球目。山口は吉田の自信がある直球を待っていたが、最後は外角スライダーにバットが空を切り、3三振。それでも山口は笑顔で打席を去った。試合後は涙したが「これからの人生で成功し、あいつを抜かせる将来にしたい」と気丈に宣言した。「最後の夏に吉田との対戦で負けたのが、心のガソリンになっている。引退した後の方が練習している。自分の打撃を見てもらいたい」。天性のホームラン“アーチスト”が再戦を待ち望む。【高橋洋平】