3年ぶりの開幕星を狙った呉は、粘りを見せるも11回にサヨナラで惜敗した。150球を投げ抜いたエース右腕沼田仁投手(3年)は、西日本豪雨の被災地に「全力プレー」で恩返しができたと、胸を張った。

「緊張していた」という初回、5回に失点を許し、チームは市和歌山の2年生サウスポー岩本真之介投手の前に7回2死までノーヒットに抑えられた。苦しい展開にも、笑顔と全力プレーは忘れない。7回にチーム初安打となる7番池田駿内野手(3年)の適時打で1点差。9回土壇場で途中出場の5番真田和弥内野手(3年)がスクイズを決め、延長戦に持ち込んだ。11回、沼田仁が「スライダーが真ん中に入った」と悔しがった150球目でサヨナラを許したが、ブルーで染まったアルプススタンドは、最後まで選手たちに大声援を送り続けた。

昨年7月に甚大な被害をもたらした西日本豪雨で、呉市も土砂崩れや浸水などで被災した。同校もグラウンドの水が出なくなるなどの状態で約1カ月間、練習をすることができなかった。選手たちはボランティアで、街の土砂かきなどに参加した。

ベンチ入り選手は全員、同県出身で呉市出身の選手も多い。熱投を見せた沼田仁は「ここ(甲子園)まで来られたのも、周りの人たちの支えがあったからだと思う。今日、応援に来てくれている人だったりに、感謝の気持ちを持って『ありがとう』という気持ちをプレーに出せた」。試合前は選手同士で「開幕戦。全員で楽しもうと話していた」といい「楽しく投げられました」と振り返った。

被災した街には「自分たちがボランティアに行った際にも、逆に『がんばれよ』と励ましの言葉をいただいた。そういう、応援してくれている人がいるということを思ったら、自分たちが全力で楽しんでプレーすることが恩返しなのかなと思って。思いっきりやりました」。アルプスの大声援に背中を押されたと話し「力が出た。あれだけ声を出して応援してくれることは無いと思うので、ほんとにうれしかったです」と、笑顔を見せた。