初出場の札幌大谷が米子東(鳥取)に4-1で勝利し、道勢4年ぶりの春1勝を挙げた。背番号17の右横手投げ太田流星投手(3年)が、9回4安打1失点で完投。攻撃は初回に春の道勢では21年ぶり2人目となる北本壮一朗遊撃手の先頭打者本塁打で先制し、計8安打4得点と打線がつながった。投打がかみ合った白星で、昨秋の明治神宮大会に続く秋春連覇へ好スタートを切った。道勢の甲子園初出場初勝利は、13年春の遠軽以来6年ぶりとなった。

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難しい初戦を、全員の力を合わせ、切り抜けた。9回2死、太田が最後の打者を右飛に打ち取りグラブを軽くたたくと、それを合図に、グラウンドの選手と、1500人集まったアルプススタンドが、一斉にわき上がった。甲子園初采配の船尾隆広監督(47)は「歴史的な1日。初出場なので何とか1勝したかった。うれしいです」と喜んだ。

全員が役割をまっとうした。先発太田は4本の被安打のうち、外野への安打はわずか1本、内野ゴロ13と巧みな変化球で翻弄(ほんろう)。1時間52分で試合を締め「内野ゴロを打たせるのは狙い通り。四死球が多くてヒヤリとした場面もあったが、勝てて良かった」と振り返った。

その太田を、主将の飯田柊哉捕手(3年)が助けた。5回1死で四球を出すと、マウンドに駆け寄った。「(太田が)少し雰囲気にのまれている感じがした。大丈夫、いけるぞと話をした」。観察力にたけた司令塔は、淡々と投げるいつもの太田との違いを感じ取り、声をかけ勇気づけた。

6回2死満塁では、背番号1の西原健太(3年)が守備で助けた。ふらふらっと一塁側スタンド方向に上がった飛球をネットぎりぎりまで猛ダッシュ。グラブの先で好捕した。「太田を助けたくて、何も考えずに走りました」。本来エースも、調子が上がらず、マウンドを譲った。「先発できなくて多少、悔しい思いもありましたが、落ち込んでいる暇はないと試合に入りました」。3-1の3回2死三塁では右前適時打を放ち、バットでも太田を援護した。

選手として駒大苫小牧で04、05年夏の甲子園を連覇した五十嵐大部長(31)は、経験値で選手を助けた。10日の和歌山入りから、就寝時間を自由にした。「選手は甲子園を目前にして必ず興奮する。時間を定めても、寝よう寝ようと思って、逆に寝られなくなる。寝たいときに寝るようにと。短時間でもしっかり寝たら疲れは取れる」。日本一を知る名参謀の策は、初陣の緊張感を解きほぐした。

初出場で一気に頂点へ駆け上がった昨秋の明治神宮大会から4カ月。互いに助け合いながら手にした春の1勝で勢いに乗り、次は秋春連覇へと、突き進む。【永野高輔】

▽総勢500人の援軍が札幌大谷の勝利を後押しした。アルプススタンドに関西の真宗大谷派の関連校、大谷、京都光華(ともに京都)、東大谷(ともに大阪)の3校と札幌大谷の吹奏楽部、バトン部などが集結し、共同応援した。全員で音を合わせたのは、この日が初めてだったが息のあった演奏で盛り立てた。京都光華の鈴木ほのかさん(1年)は「たくさんの人と応援ができてとても楽し勝ったです」と話した。