初出場の札幌大谷が米子東(鳥取)に4-1で勝利し、道勢4年ぶりの春1勝を挙げた。背番号17の右横手投げ太田流星投手(3年)が、9回4安打1失点で完投。攻撃は初回に春の道勢では21年ぶり2人目となる北本壮一朗遊撃手の先頭打者本塁打で先制し、計8安打4得点と打線がつながった。投打がかみ合った白星で、昨秋の明治神宮大会に続く秋春連覇へ好スタートを切った。道勢の甲子園初出場初勝利は、13年春の遠軽以来6年ぶりとなった。

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北本がファーストスイングで決めた。初回、3-1からの5球目、内角直球を迷わず振り抜くと、全速力で一塁を蹴り、二塁へと走った。「三塁手前で野手が動きを止めたので、(本塁打と)ようやく分かった」。喜びに浸る余裕もなく真顔で本塁を駆け抜けた。自身公式戦1号が昨年9月12日、秋季札幌地区予選3回戦(札幌円山、北海道科学大戦)での先頭打者初球弾。半年ぶりの2号は、聖地での先頭弾となった。

絶不調の1番が、大舞台で大仕事をやってのけた。10日に和歌山入りしてから、練習試合4試合に出場し16打数2安打5三振。「打とう打とうと思ってボール球に手を出していた」と言う。試合の2日前、父満さん(49)に打撃フォームの動画を送信して相談。「屋外に出たばかりで遠くに飛ばそうと、後ろへの戻りが大きくなっている」と助言を受けると、スタンドで見守る父の目の前で、しっかり結果を出してみせた。

2年前の10月8日に亡くなった祖母・眞知子さん(享年70)の口癖が「壮一朗が甲子園に行ったら絶対に応援に行くからね」。昨秋、その命日にチームは全道大会優勝を果たし甲子園出場を決めた。だが、自身は準決勝で左肩を負傷。試合に出られなかった。11月の明治神宮大会決勝では左あばら骨を骨折。冬場はつらいリハビリが続いたが「甲子園でプレーする姿をおばあちゃんに見せたい」との思いで、耐えてきた。

苦しみ抜いて放った最高の1発に「やっといいところを、見せられた」。空に放った渾身(こんしん)のアーチが、優しく見守ってくれた祖母への、感謝のメッセージになった。【永野高輔】