28日に2回戦敗退した星稜(石川)が29日、地元金沢市に向けて大阪市内の宿舎を出発した。習志野(千葉)のサイン伝達行為を疑い、試合後に直接抗議に行ったことで物議をかもした林和成監督(43)が出発前に取材に応じた。

林監督は試合後、習志野の控室に2度乗り込み、小林徹監督(56)に抗議する前代未聞の行為に出ていた。前日に日本高野連から事情聴取を受けていたが、この日朝にあらためて日本高野連に謝罪の連絡を入れたという。

「生徒を浮つかせてしまった私の責任。行きすぎた行動で多大なご迷惑をお掛けしたことを謝罪したい。混乱を招いた。お立ち台の上で相手を批判するようなことを言ったことも深く反省している。習志野さんもまだ試合があるので、謝罪をしないといけないと思っている」。神妙な表情で反省の言葉を並べた。

一方で、意外な事実も明かした。最初に小林監督の元を訪れた際「星稜さんもやっているでしょ」と言われたという。それに納得いかず、再び抗議に訪れたことを明かした。

林監督は「売り言葉に買い言葉。根拠がないことで私も犯人あつかいされた。そのことには向こう側にも謝罪を求めたいですね。我々がやっているわけがない。昭和時代、我々の時代はやっていましたよ。でもその後、石川県はやらないでおこうと周知徹底して、県として根絶しましたから。私の中では(習志野は)『あったのでは』といまだに思っている。でも審判がなかったと言っているので、そこは受け止めないといけない」と敵将のリアクションには不満を募らせた。

審判団が星稜からの要請を受けて協議したのは4回の習志野の攻撃中だった。その後の7回、福本陽生内野手(3年)が二塁打で二塁に進んだ際、習志野ベンチから「やってる!」と声が飛んでいたという。

指揮官にとっては敵将への抗議は覚悟の上だった。「私は選手と同じく一大会にすべてをかけている。結果が出なければ、いつでも責任をとる覚悟を持っている。言動、行動の批判を受けて(学校などから)何らかの処分があるのなら、受け止めます。軽はずみでやったことではない。(指摘は)高校球界のためにもやらないといけないと思った。ただ、やり方が間違っていたことは反省している」と話した。

前夜は泣きながら監督室に入ってきた選手もいたというが、林監督は「選手には原因をしっかり追求しないと夏にここに戻って来られないよと伝えました。負けた原因はそこ(サイン伝達疑惑)にあるわけじゃない。そこは勘違いしないでほしいです」。力不足を認め、出直しを誓った。

今大会最速151キロを出し、1回戦の履正社(大阪)戦は17奪三振完封、習志野戦も10三振で3失点完投した奥川恭伸投手(3年)は決意を込めた。「もう切り替えました。負けた原因を帰ってから見直して、反省する。この負けを生かさないといけない。あの負けがあったからという戦いができるように。チーム全体のメンタルの弱さがもろに出た。足りないところを伸ばして、同じ負けはしないようにしたい」。りりしい表情でバスに乗り込んだ。